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ノルディック複合で金メダルを狙う!
渡部暁斗は荻原健司を越えるか。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShino Seki
posted2013/01/04 08:01
12月23日の全日本コンバインド大会では3連覇を達成。今季課題のジャンプでも「割と早く対応できている」と1月からのW杯遠征に向け、手応えを感じていた。
年が明け、ソチ五輪まであと1年あまりとなった。プレ五輪シーズンも佳境を迎える。
特に今シーズンは、スキー競技でも、2、3月に世界選手権が開催される。その大会に向けて、こう抱負を話す選手がいる。
「世界選手権でメダルを獲ることが今シーズンの目標です。世界選手権のメダルを目指すことで、ソチにピークを合わせるようにイメージしていきたいです」
ノルディック・コンバインド(複合)の渡部暁斗だ。昨シーズン、ワールドカップで総合2位に入り、ソチでのメダルが期待されている。
現在24歳だが、第一線でのキャリアは長い。2006年、白馬高校3年のとき、トリノ五輪に出場。その後も日本代表として各地を転戦し、'09年、リベレツで行なわれた世界選手権では団体戦のメンバーとして金メダルを獲得。日本勢では14年ぶりのことだった。
2度目のオリンピックとなったバンクーバーでは、個人(ラージヒル)で日本選手中最高の9位。団体戦では6位入賞を果たしている。
着実な歩みを見せていた渡部の才能が、一気に花開いたのは、昨シーズンのことだ。ワールドカップの開幕戦で自己最高の2位になると、その後、4度にわたって優勝し、総合2位になったのである。この成績は、国際大会で圧倒的な強さを見せ、「キング・オブ・スキー」と呼ばれた荻原健司が1995-'96年シーズンに記録して以来という日本人としての快挙であった。
若手に経験を積ませる日本代表の取り組みが実った。
渡部の成長には、2つの要因がある。
一つはナショナルチーム全体の取り組みだ。
ノルディック・コンバインドは、荻原を筆頭に、日本がかつて世界一の座を誇った種目である。'92年のアルベールビル、'94年のリレハンメルと、日本は団体戦で2大会連続金メダル。世界選手権でも'93年に個人と団体、'95年は団体、'97年は個人で金メダルを獲得というように、成績が強さを物語っている。海外各国よりいち早く取り入れたV字ジャンプにより、前半のジャンプで圧倒的な差をつけ、後半のクロスカントリーで逃げ切るパターンを得意としていた。
だがその後、ジャンプのポイントの比率を下げるルール変更が行なわれ、さらに海外の強豪がジャンプの実力を上げたことで、アドバンテージを失った日本は低迷していった。
この状況に対応するため、全日本スキー連盟はクロスカントリーの得意な選手を選抜し強化する方針を打ち出した。それとともに、若手を大胆に日本代表に抜擢して経験を積ませた。渡部もその一人だ。
それが'09年以降の日本勢の復調につながっている。