セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
ゼーマン&トッティでド派手チームに。
攻め続けるローマの“悪役上等!!”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2013/01/08 10:30
古巣ローマに復帰した指揮官ゼーマンが掲げる攻撃的かつスペクタクルなサッカーを体現する主将トッティ(左から2番目)とホープのラメラ(右)。
ミッキーマウスやミニーに囲まれるトッティは満面の笑みだった。
ASローマは年末年始にかけ、米国フロリダ州「ディズニー・ワールド」でミニキャンプを張った。渋面の指揮官ゼーマンと、愛と魔法の巨大遊園地。およそ接点を見つけにくい両者をつなぐものがあるとすれば、それは“極上のスペクタクル”という点に尽きる。
前半戦19試合を終えて、ASローマのチーム順位は6位ながら、総得点43はリーグトップ(※4節カリアリ戦の不戦勝扱いによる「3-0」含む)。10得点のラメラとオズバルドを稼ぎ頭に、次点の主将トッティも6得点を挙げ、新加入のデストロが4点で続く。好調FW陣はリーグ屈指の層の厚さを誇る。
一方で、リーグ戦19試合の失点数33はワースト2位という極端さ。「不利な笛を吹かれてPKを2、3本与えようが、5点取ってしまえば勝てる」という、ゼーマンのわかりやすく、過激なコンセプトは攻撃偏重のリスクをつねに孕んでいて、意図せずとも打ち合い勝負を呼ぶ。相手の力を存分に引き出したことが仇となって派手に散るときもあれば、勝つときは3点、4点奪うのが当たり前という出入りの激しさだ。今季のASローマのサッカーは、相手にも観る者にも息つく暇を与えない。
開幕直後のユベントス戦では4失点の大敗を喫す。
シーズンイン当初は苦戦が続いた。
13年ぶりに復帰した指揮官の理想を選手全員が消化するには、夏のキャンプだけでは短すぎたのだ。
昨季、ゼーマンが率いてセリエB優勝を成し遂げたペスカーラは、人口12万人強の小さな地方都市のチームで、その組織も動く金額も質素なものだった。それに比べ、“永遠の都”の名を冠するASローマの組織規模や複雑さは段違いで、外部からの圧力も強い。多少時間がかかっても、クラブ内部のパワーバランスを把握しないことにはASローマで物事は進まない。
開幕間もない9月末に対戦した怨敵ユベントスには、完膚なきまでに叩かれ4失点大敗。もともと指揮官と相性の悪いローマ・ダービーでも退場者を出した挙句、ラツィオに3失点黒星を献上した。