セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
ゼーマン&トッティでド派手チームに。
攻め続けるローマの“悪役上等!!”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2013/01/08 10:30
古巣ローマに復帰した指揮官ゼーマンが掲げる攻撃的かつスペクタクルなサッカーを体現する主将トッティ(左から2番目)とホープのラメラ(右)。
血の気の多い選手たちにも妥協しなかったゼーマン監督。
この頃には、次期主将と目されているMFデロッシの増長も問題化した。
現在のロッカールームにはイタリア代表FWオズバルドや同デストロなど血の気の盛んな人間が揃う。彼らは高い能力に比例して我も強い。浅い指導経験しか持たなかった前任者ルイス・エンリケは、距離のとり方を誤ったおかげで選手たちから侮られた。
百戦錬磨のゼーマンは選手の顔色を窺うような真似はしない。
起用法への不満や大所帯チームに溜まる鬱憤を無理に封じ込めることはせず、自らが毒を吐くことでロッカールームのガス抜きをした。
「私は選手たちから愛されようが憎まれようが一向に構わん。与える任務を完遂さえしてくれればいい」
強面でブレない姿勢が、かえって選手たちの尊敬を集めた。中盤の主力には、指揮官命令へ絶対忠誠を誓うUSA代表MFブラッドリーと戦術眼に優れたMFタフチディスを抜擢。ともに屈強なフィジカルを持つ彼らを重用しながら、あえて攻撃に重きを置く不安定な攻守バランスを見出した。
2016年オープンとなる新スタジアムの建設が正式決定!!
晩秋の声を聞く頃からチームは好転し始めた。
昨年末には、自前スタジアム建設へようやく正式にゴーサインが出た。最大6万人収容の新ホームはローマの南部郊外に、2016年夏のオープンを目指す。新会長ジェームズ・パッロッタの夢は、その頃40歳になっているトッティが新スタジアムの第1号ゴールを決めることだ。
現在36歳の主将トッティは、今年3月にセリエAデビュー20周年を迎える。“今さらトッティ?”と訝りたくなるのも道理だが、それは大きな見当違いだ。今季、左サイドでやや下がり目にポジションを取る彼は、足元のスペースを得たことで非凡なセンスを生かして好アシストを連発しつつ、自らもゴールに絡む。
4-2で圧勝した16節フィオレンティーナ戦では、両チーム最多のボールタッチ数を記録しつつ、圧巻の2ゴール1アシスト。本拠地オリンピコを埋めたロマニスタたちへ恍惚の90分間をプレゼントした。親友である敵指揮官モンテッラも「あいつは衰え知らずか」と脱帽するしかない。