南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
中村憲剛の知られざる“仕事”が
日本代表を決勝T進出に導く!
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byNaoki Nakanishi/JMPA
posted2010/06/21 11:30
「デンマークとカメルーンの試合は部屋で見ました。右サイドのロンメダールがすごい速いし、いい選手なんで楽しみですね。強い相手が来るほどやりがいがありますし、今まで積み重ねてきたことを出せる喜びを感じながらやっています。何より楽しんでいるということが大切だと思いますね」
オランダ戦から一夜明けた20日。日本代表がベースキャンプを張るジョージに戻った長友佑都の目は、輝きを増していた。
カメルーン戦でエトーと対峙し、オランダ戦では快足のエリアが投入されると同時に岡田監督から対応を任され、右サイドバックの駒野友一とポジションチェンジをした。
難しいミッションをしっかりとこなし、大いに自信をつけている。
「チームの雰囲気はいいと思います。きょうも(本田)圭佑がオランダで対戦したことのあるロンメダールのことを教えてくれましたしね。デンマーク戦は引き分け狙いというのではなく、勝つ気で行きますよ」
威勢がいいのは長友だけではない。ゲームキャプテンの長谷部誠も、オランダ戦を終えて前向きな言葉を並べた。
「しっかりとした守備ができれば、オランダでも簡単には崩せないという手ごたえがありました。攻撃の部分では、シュートで終われる場面がけっこう多くできたので、そのへんは去年9月の対戦より良かったのではないかと思います。負けたことに関しては悔しかったけど、気持ちの切り替えというのは今までもやって来ているし、デンマーク戦はポジティブにいけると思います」
「ゾーンDFがうまくハマっている」と強調する長谷部。
このように主力選手が明るい表情を浮かべている背景には、カメルーン戦の勝利もさることながら、2試合で1失点という守備の成功がある。中でも今の岡田戦術の肝になっているのが長谷部、阿部勇樹、遠藤保仁のトリオで作る中盤の守備ブロックだ。
本番前の2試合、イングランド戦では阿部がアンカーの役割を担い、コートジボワール戦ではエリア限定ながらマンツーマンもやったが、ワールドカップでの2試合はいずれもゾーンDFを敷いている。
オランダ戦の2日前に非公開で行った紅白戦では、今野泰幸が阿部の位置に入り、スナイデルをマンマークで抑えるやり方も試したというが、仮想スナイデルがサイドに流れると真ん中が開くという問題が出た。
結局、岡田監督は1戦目と同じゾーンDF、同じメンバーを選択。スナイデルにゴールを奪われはしたものの、結果的には1失点に抑えたことがグループリーグ突破の条件を緩めること(デンマーク戦引き分け以上で突破)につながった。長谷部は「カメルーン戦からやっているゾーンDFがうまくハマっている」と、守備が流れを作っていることを強調する。