MLB東奔西走BACK NUMBER
大谷翔平のメジャー行きになぜ驚く?
有効な対策を取らないNPBの不思議。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2012/10/25 06:02
今年9月、ロサンゼルス・ドジャースのローガン・ホワイトGM補佐(写真中)が花巻東を訪れ、面談を行った後の写真。エーシー・興梠アジア部長(左)、小島圭市スカウトと共に。「大谷選手は世界でもトップクラスのアスリートです。ドジャースに来てほしいと思っている。必要なら毎日足を運ぶつもりだ」と語ったローガン氏。
韓国、台湾ではMLBと契約する選手がすでに多くいた。
日本に限ったことではない。同じようにプロリーグを有する韓国、台湾ではずっと前からドラフト上位指名候補選手たちとMLBの球団が契約をかわしてきている。朴賛浩投手が1994年にドジャースと契約したのを皮切りに、金善宇投手(1997年・レッドソックス)、金炳賢投手(1999年・ダイヤモンドバックス)、秋信守選手(2000年・マリナーズ)と、多くのトップクラスの選手たちが直接メジャー入りしている。
台湾も同様だ。メジャーでも活躍している郭泓志投手(1999年・ドジャース)、王建民投手(2000年・ヤンキース)等々、若い有望選手たちがメジャー行きの道を選択している。
事実、キャンプ取材の時期になるといつも驚かされているのだが、マイナーキャンプには非常に多くのアジア人選手がいる。今では逆にアジア人選手がいないチームを探すのが困難なほどだ。
そんな隣国の状況を横目で見てきたにもかかわらず、“対岸の火事”と決め込んできたのが他ならぬNPBなのかもしれない。いやむしろMLBと同じ視点で、台湾、韓国のトップ選手たちを獲得してきたというべきだろう。普段は市場原理に則って、他国のリーグから選手を獲得しておきながら、自分たちが同じ立場になると被害者のような振る舞いをするのはあまりに虫が良すぎるというものだ。
ポスティング制度に懲りたメジャー球団が、次に考えたこと。
ここ数年、MLBの中で日本人選手の評価が急落してしまったのは、このコラムでも何度となく報じてきた。
ポスティング制度を利用し、選手を獲得することで投資費用が莫大な額に上ったにもかかわらず、残念ながら対価に十分見合うほどの活躍ができなかった松坂大輔投手や井川慶投手などの例もある。そうなればメジャー各球団も必然的に、韓国や台湾などと同様、日本で若い有望選手を発掘し、自分たちで育成しようと考えるのは至極当然のことだ。