W杯紀行 思えば南アへ来たもんだBACK NUMBER
開幕直前の南アはどうなっている?
日本代表の歓迎ムードを体感する。
text by
竹田聡一郎Soichiro Takeda
photograph bySoichiro Takeda
posted2010/06/11 10:30
日本代表の練習を見ているとセンチメンタルな気持ちに。
さて、その監督は市内のouteniquaスタジアムのピッチ、100人を超えるメディアの視線の先で腕を組んでいた。さらにその視線の先には日本でいちばん強いチームがボールを蹴っている。僕と同い年の稲本潤一の声がよく通る。
よく分からないけどなんだか泣きそうになった。
W杯がいよいよ始まり、先乗り現地情報を伝える僕の旅が終わりつつあるからだろう。インフラの未整備に驚き、チケットの売れ残りを案じ、トウモロコシをカツアゲされた。いつもワルモノの目線を意識した1カ月はそれなりにタフだった。
そうしてちょっとオセンチになりながら、シュート練習を見ていると大久保嘉人が豪快なボレーをかました。ボールはわずかにバーを超えていったけれど、スタンドの上の方からは歓声があがった。
「大丈夫だよ、マイフレンド」を信じて旅の続きを。
目をやるとセキュリティがざっと50人はいて、我々と同じようにピッチを見守っている。彼らは特にシュート練習が好きなようで、矢野貴章がスライディングでゴールに飛び込むときには、興奮して腰をあげていた。ちょっと彼らと話した。
「日本代表はどう? 勝てると思う?」
「うん。全員、レベルが高いんじゃないか。驚いたよ」
「ありがとう。でもいつも得点が取れなくて苦労してるんだ」
「そうなのか? シュートうまいじゃんか。ホラ」
ピッチでは遠藤保仁が強烈なミドルシュートを枠に飛ばした。でも試合では、うまくいかないんだと言いかけた僕の肩を叩く。
「大丈夫だよ、マイフレンド。きっとうまくいくさ」
出た。
思えば南アに来てから、治安もインフラに関しても、ずっとこうだった。
僕は4年前に南アを旅したこともあるが、その時ケープタウンのグリーンポイント地区は本当に何にもない、ただの草原だった(写真右は4年前のもの。今は立派な街並みとスタジアムがある)。
彼らは実際に「大丈夫大丈夫」を繰り返しW杯を実現させた。Number Webでのコラムは今回で終了ですが……その言葉を信じて、もう少しだけ旅を続けることにする。
さあ、カメルーン戦だ。