W杯紀行 思えば南アへ来たもんだBACK NUMBER
開幕直前の南アはどうなっている?
日本代表の歓迎ムードを体感する。
text by
竹田聡一郎Soichiro Takeda
photograph bySoichiro Takeda
posted2010/06/11 10:30
6月に入り開幕前の最後の週末。ケープタウンの街は夏休み最後の小学生のごとくてんてこ舞いだった。週末返上でスタジアム周辺や駅の工事を進め、ただ銀色の鉄柵で囲ってあるだけのだだっぴろい市庁舎前のスペースをファンゾーンに変えてみせた。なぜかいきなり観覧車も出現した。
どの都市もおおむねそんな感じで、バファナバファナ(南ア代表)もテストマッチの間にマンデラさんを表敬訪問したり、大忙しだ。
すべての新聞には各都市のスタジアムまでのアクセスや、何日の何時からこの通りが通行止めになりますよといったガイドが折り込まれていた。偉そうに言わせてもらえば「やればできるじゃねーか、南ア」といった感じだ。
作業員のひとりに、
「日曜日なのに、工事をするなんて!」と声をかけてみると「えへへ」と誇らしげに照れ臭そうに笑っていた。「もう我々はレディ(準備完了)だぜ!」だそうだ。11日には開幕2試合目となるのフランスvs.ウルグアイもここケープタウンで開催される。ロングストリートではその両国サポーターが軽い口喧嘩をしていた。いよいよだ。
日本代表のニュースは皆無のまま、キャンプ地へ向かう。
さて、僕はというと(たぶん)準備完了のケープタウンから東へ400キロあまりレンターカーを駆り、岡田ジャパンが合宿を張るジョージに向かった。
相変わらず新聞には「ポルトガル、ワンマンショー。テストマッチで3ゴールを奪った」「アルゼンチンはメッシだけじゃない」といった記事は載るが「サー岡田、3ボランチにトライ」なんていうのはお目にかかれない。現地にいるのに日本の報道を頼りに代表の情報収集をしているなんて冴えない話だ。
レンタカー屋のブライアンは「日本、知ってるよ」という希有な人物だったが、「ジョージに滞在するんだろ。いいなあ。あそこは南アでも最高級最大級のゴルフリゾートなんだよ」と単なるゴルフ・ファンなだけなのだった。
日本代表を大歓迎ムードのジョージの街並み。
しかしジョージ市内は日の丸を多く見かけ、ガソリンスタンドでは「コニチハ、アリガトウ」と声をかけられた。初日の練習には何千人単位で見学者が集ったらしいし、あんまり治安が良くなさそうなエリアにも日本に対するカッコ良くもユニークなグラフティも見つけた。
歓迎ムードのようでとりあえず安心した。
高い建物が少なく、ジョバーグやケープタウンに比べると道ゆく人はのんびりと歩いている。ここならいい準備ができそうだ。
ツーリストインフォメーションの男性は
「ぜひ7月まで滞在してもらいたい、って監督に言っておいてくれ」
と親指を立ててくれた。