フットボール“新語録”BACK NUMBER
“爆発的な選手”には“正しい休息”を。
オランダ発の新トレーニング理論とは?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2012/09/11 10:30
今夏、イギリス代表としてロンドン五輪にも出場したウェールズ出身のクレイグ・ベラミー。サイドから快足を活かしたドリブルで、ゴールへと向かっていくプレーが持ち味である。
「爆発的なスピードを持つストライカーやセンターバックは、みんなと同じ量のトレーニングをする必要はない」
レイモンド・フェルハイエン(オランダ人コンディショニングコーチ)
今年1月、オランダ発の新コンディショニング理論、『ピリオダイゼーション』を取り上げたところ大きな反響を頂いた。
オランダ人のレイモンド・フェルハイエンが十数年前から提唱している理論で、レイモンドはヒディンク監督の右腕として韓国代表の2002年W杯ベスト4やロシア代表のユーロ2008のベスト4を陰で支え、その他にもライカールト監督時代のバルセロナでトレーニング改革を成功させた。
簡単に復習すると、この理論の特徴はサッカーにおけるプレーの「爆発力」と「アクションの頻度」を向上させることにある。
イメージで表すと、次のようになる。
x → X (爆発力の向上)
X.........X → X...X...X...X (アクションの頻度の向上)
また、この能力を90分間どれだけ保てるかという「持続性」にも取り組む。
具体的には週に約1回、フィジカル能力アップのためのトレーニングを行い、6週間を1サイクルとして、1年間のスパンでコンディショニングとフィジカルを上げていく。今や世界中で『ピリオダイゼーション』が実行されている。
選手個人の特徴や能力によって練習内容は変えるべき!?
もちろんレイモンドのような改革者の理論が、いつまでも同じところで踏みとどまっているわけがない。約3年前から、レイモンドは新たな試みを始めている。それが選手個々の能力を考慮した『インディビジュアル・ピリオダイゼーション』だ。
レイモンドがこの理論を始めるきっかけになったのは、選手たちからの苦情だった。たとえば、あるセンターバックの選手は、試合の中で中盤の選手ほどには動かないのに、同じ量のトレーニングをすることに疑問を抱いていた。また、ベテランの選手の中には、日々の練習量を減らしてほしいという声もあった。
こういうことは誰もが漠然と気がついてはいるものの、なぜかサッカー界では全員がすべて同じトレーニングをするのが通例となっている。レイモンドは、その常識を壊すべきだと考えるようになった。
レイモンドは言う。
「サッカーはチームスポーツですが、負荷に耐えられる許容量は個々によって異なってくる。チーム全体に同じトレーニングの負荷をかけると、ある選手にとってはすごく簡単なトレーニングになるし、ある選手にとっては負荷が高すぎるトレーニングになるかもしれない。それを解決すべきなのです」