フットボール“新語録”BACK NUMBER
“爆発的な選手”には“正しい休息”を。
オランダ発の新トレーニング理論とは?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2012/09/11 10:30
今夏、イギリス代表としてロンドン五輪にも出場したウェールズ出身のクレイグ・ベラミー。サイドから快足を活かしたドリブルで、ゴールへと向かっていくプレーが持ち味である。
年齢、ポジションによっても練習量を調整する。
(2)の年齢は、それほど説明がいらないだろう。
ベテランになればケガをしやすくなるし、10代の若手の体はまだ発展途上にある。20代のバリバリでやれる選手と同じトレーニングを行なうのは酷だ。
「26歳の選手はすべてのトレーニングに耐えられると思うけれど、17歳の選手は体が完全にできあがってない。逆に35歳の選手は体が衰えているので、同じトレーニングをするとオーバーロードになります」
この理論が斬新なのは、(3)のポジションについてだ。ポジションによって、練習量を変えるのである。
「センターバックの選手は、中盤の選手に比べて試合中のアクションが圧倒的に少ない。もし同じトレーニングをしたら、中盤の選手の方がフィットして見える一方で、センターバックにはオーバーワークになる可能性がある。センターバックによってもプレースタイル、体つき、年齢が異なるので、すべてのセンターバックの練習量を減らせということではありませんが、ポジションは考慮すべきポイントのひとつなのです」
オランダ代表のフラールにかけたレイモンドの“魔法”。
今季、フェイエノールトからアストン・ビラに移籍したオランダ代表のフラールは、まさにレイモンド理論で復活したセンターバックだ。
フラールは2007年から2011年までの4年間、前十字靭帯を2回切断、ハムストリングのケガを4回負った。オランダ国内では「プロとして適さないのではないか」とまで言われた。
しかし、フェイエノールトの育成改革に携わっているレイモンドがフラールに魔法をかける。昨季の開幕前に2人は話し合い、練習量を減らすことを決めた。すると昨季フラールはケガをすることなく、オランダリーグですべての試合に出場し、さらにプレミアリーグ行きのチケットまで手にしたのだった。
今年12月にレイモンドのセミナーが日本でも開催。
ここでひとつ疑問がある。練習量はどうやって減らすのだろうか? その詳細はとても1度の記事では触れられないが、エッセンスは次のようなものだ。
「たとえば、5対5のトレーニングを4セットするとしたら、“爆発的な選手”や年齢が上の選手は3セットしかしないようにする。つまり、セット数を減らすことで調整するんです」
今年12月にレイモンドによるセミナーが日本で行なわれることが決まっており、より詳細を知りたい方はワールドフットボールアカデミー・ジャパンのHPを参照してほしい。
Jリーグも終盤にさしかかり、それぞれのチームにおけるケガ人の数が優勝争いや残留争いの行方に大きく影響する可能性がある。レイモンド理論をコピーする必要はないが、その考え方やアイデアは参考になるはずだ。