日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
オシムも認めたイングランドとの善戦!
内容は「判定勝ちしていたかも」。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2010/05/31 12:10
「イングランドを怖がらず果敢に挑んだ」と褒めるオシム。
オシムは言う。
「(日本は)相手をリスペクトしすぎることなく戦った。イングランドを怖がらず果敢に挑んだ。相手が何をしていいかわからないところまで追い込んだのは進歩だった」
日本は守備的な布陣ではあったが、前半はダイレクトパスでつないでペナルティーエリア付近まで進み、イングランドの守備を慌てさせてもいる。オシムは、中村俊輔を欠くチームでパスの出し手となる遠藤保仁が働くスペースを長谷部、阿部の2人が献身的につくっていたことを評価する。
「2人が地道に人に(マークに)ついてスペースを消してということをやっていて、そのために(攻撃のときに)遠藤がフリーになる場面があった。フリーでボールを受けると、イングランドは手こずった」
「守備はよくやっていたと思うが、必然的な自殺点」と本田。
しかし、結果は昨年9月のオランダ戦と同様に後半に得点されての負け。優勝候補を相手に、終盤に入って足が止まったのも同じだった。遠藤の足が鈍ってテンポのいいパス回しがなくなり、さらに全体の運動量が落ちたところで2度のオウンゴールは生まれるのである。時間が経つにつれてラインが下がるようになり、本田圭佑は「守備はよくやっていたと思うが、必然的な自殺点」と語っている。
「運動量」「献身性」「速いボール回し」という日本の特徴を取り戻した戦いであった一方で、乗り越えなければならない壁があることもあらためて思い知らされた。
オシムは90分間、戦い抜くために必要なこととして「体力のコントロール」を挙げる。
「残り2週間で準備ができるのはメンタル。1-0で勝っているのに、前に行ってはボールを取られて戻ってくる、というのを何度も繰り返していた。ここは行くか、行かないかの共通の判断を持って、試合のテンポを変化させることができればいい。そうすれば120分でもプレーできるかもしれない」
4年前に引き分けに終わったドイツ戦とどこが違うのか?
試合後、選手たちの表情は一様にして硬かった。この日キャプテンマークを巻いた長谷部の口からも課題ばかりが口をついた。
「多少の手ごたえはあるが、チームとしてもう少し攻撃を上げていきたい。体力的に厳しくなっても、いかに正確なプレーができるか。ミスをなくしていかないとやはり厳しい」
とはいえ、スイス入りしてから選手だけでミーティングを行ない、意見をぶつけ合った効果が徐々に表れている。ハーフタイムの際や試合後も、気付いたことを話し合っていたという。チームは間違いなく、まとまろうとし、変化しようとしている。
4年前、トップコンディションに近い状態で戦って引き分けたドイツ戦とは違って、チームコンディションがまだ不完全な状態でイングランドを苦しめたことは大きい。セルビア戦、韓国戦で叩きのめされた選手、指揮官がここに来てファイティングポーズを取り戻すことができたのは、何よりの収穫だ。
「みなさん、今日の試合はポジティブに考えるべきですよ」
オシムは何度もそう強調した。
これまでの苦闘を反動にできれば、岡田ジャパンはとてつもない力を取り込めることができるかもしれない。