なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
アジア杯で3位のなでしこジャパン。
W杯出場決定だが、課題も明らかに。
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph bySports Graphic Number
posted2010/05/31 11:35
最低限の結果は手にした。
なでしこジャパンは中国との3位決定戦に勝利し、2011年女子W杯ドイツ大会の出場権を得ることができた。
何が何でもボールに食らいつく気迫で圧倒された準決勝オーストラリア戦の反省を踏まえ、中国戦では逆になでしこが球際のぶつかり合いにも躊躇なく飛び込んでいった。2得点はいずれもセットプレーがらみのものだったが、終始ゲームを支配し続けた危なげのない戦いぶり。大黒柱の澤穂希は、
「若手はこんなにプレッシャーのかかる試合を経験したことがなかったはず。大会を通じてそんな選手たちの成長が感じられ、ベテランとしては背中を押された気持ちでした」
と、成都の地で得た収穫を口にした。
しかしまた、準決勝以降の本当にタフな試合の中で露呈した深刻な課題もある。
FWの貧弱さだ。
豪州代表監督「日本のFWには恐さが全くなかった」。
今大会初戦で、日本の前線の軸である大野忍が脚を負傷。ドリブルとシュート力に長けた彼女は、2戦目以降の欠場を余儀なくされた。
はるか格下のチーム(タイ)やコンディション不良のチーム(北朝鮮)には、他のFWでも充分通用した。しかしオーストラリアや中国といった大柄で当たりも強い実力国が相手となると、大野の抜けた穴を埋めきることはできなかった。安藤梢、永里優季、山口麻美といった『海外組』も、準決勝以降は目立った働きを見せられずじまい。激しいプレッシャーの中で敵をかわせず、ボールの収まりどころにもならず、そして放つシュートの多くは枠を外れた。準決勝の翌日、オーストラリアのセルマンニ監督はなでしこの攻撃を評してこう言った。
「日本の中盤の組み立ては見事だが、FWに恐さは全くなかった。だからひやりとさせられたのは、セットプレーの場面だけだったね」
海外組FWが日本代表に貢献するのはもう少し先か?
『海外の強豪クラブに所属している』イコール、『海外の強豪クラブで活躍している』ではない。安藤や永里はドイツ女子リーグにおけるそれぞれの所属チームで、まだレギュラーさえ掴み取っていない。両者とも公式戦でいくつかゴールを決めてはいるが、それはすでに勝負の趨勢の決した後や、格下相手の試合で挙げたもの。二人が世界のトップリーグで鍛えられた成果をなでしこに還元できるのは、もう少し先になりそうだ。
そして山口は本来、トップ下を得意とする選手。アメリカでの所属チームでも、司令塔として出場している。だからFWとしてのボールの引き出し方やシュート意識が、まだ物足りない。
佐々木則夫監督は大会前から海外組FWを過大評価せず、
「攻撃のパーツのひとつ」
と捉えていた。その通り、対戦相手や試合展開に応じて3人以外のFWも投入したのだが、結局大野や海外組を押しのけようかという存在感を示すには至らなかった。