スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
ジマーマンとセール。
~サイ・ヤング賞を争う若き有望株~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2012/08/13 10:31
ナ・リーグ東地区首位を走るナショナルズをストラスバーグとともに牽引するジマーマン。
クロモヴィジョジョの泳ぎに見とれ、ボルトの走りに毒気を抜かれたロンドン五輪だが、そうこうしている間にも、アメリカ野球は刻々と時を刻みつつある。
気がつけばシーズンの3分の2は過ぎ去り、残りは50ゲーム程度しかない。ナショナルズ、パイレーツ、ホワイトソックスといった惑星に加えて、伏兵ブレーヴスやアスレティックスまでが虎視眈々とプレーオフをうかがう風景は、この時期の常とはいえ、やはりなかなかスリリングだ。
と同時に、個人タイトルの行方もここへ来て修正を余儀なくされはじめてきた。本命と目されていた選手が故障で離脱したり、前半戦で不運に泣かされた選手が、じわじわと運を取り返したりしているからだ。
なかでも面白そうなのは、ナ・リーグのサイ・ヤング賞争いだと思う。
シーズン前半、この賞の行方は、R・A・ディッキー(メッツ)とマット・ケイン(ジャイアンツ)のふたりに絞られていた。
若手の実力派として特に注目のジマーマン(ナショナルズ)。
ただ、ディッキーもケインも、最近10試合の成績がどうもぱっとしない。ディッキーは63回3分の1を投げて防御率が3.69。ケインのほうも66回3分の1を投げて防御率が3.80。前半戦の貯金があるため、ディッキーが14勝3敗、防御率=2.82、ケインが10勝5敗、防御率=3.01と表向きの成績は立派なものだが、どちらも脆いところのある投手だけに、このまま尻すぼみに終わってしまう可能性がないとはいえない。
そこで浮上してくるのが、ジョーダン・ジマーマン(ナショナルズ)、ジョニー・クエト(レッズ)といった若手の実力派だ。
わけても、注目はジマーマンである。前半の彼は、味方打線の掩護不足に泣かされてきた。同僚のスティーヴン・ストラスバーグやジオ・ゴンザレスが着々と勝ち星を積み重ねるなか、前半戦12試合の成績は3勝5敗。防御率が3点に満たないという優秀な数字だっただけに、投げても投げても勝てないジマーマン、という印象を観客に与えてきた。