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亜大と早大が優勝候補の筆頭か。
大学選手権の注目選手を一挙紹介!!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/06/12 06:01
亜大・東浜は今春の東都大学リーグで5勝1敗4完封、防御率0.92の成績を挙げ、最高殊勲選手、最優秀投手、ベストナインの3冠に輝いた。大学選手権では早大・吉永との決勝での投げ合いを熱望している。
亜大グラウンドを見守っている「全力疾走」の石碑。
走塁面も見てみよう。
JR武蔵引田駅から10分ほどのところにある亜大グラウンドには「全力疾走」の文字が横書きで刻まれた石碑がある。亜大にとって全力疾走は「チームカラー」などという生易しい言葉で表現できるものではなく、自らの生存をかけた必勝ツールである。
<一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12.3秒未満>
以上は全力疾走の指針となる打者走者の各塁到達タイムだが、ここ数年鈍磨していた。たとえば、'09年春のノートを見ると、5/5の国学院大戦では全力疾走のタイムクリアは1人1回しかいなかった。5/12の立正大戦は2人2回、5/26の東洋大戦は1人1回、という具合。'09年春だけがそうだったわけではない。本当に長い間、「全力疾走」は空念仏に終わっていた。それが今年は明らかに走っている(以下、全力疾走のタイムクリア人数)。
4/18 日大戦 4人6回
4/20 日大戦 3人5回
5/ 9 東洋大戦 4人6回
5/10 東洋大戦 2人2回
全力疾走では東京六大学リーグの覇者、早大も負けていない。
首位攻防戦となった法大1、2回戦では佐々木孝樹、中村奨吾、地引雄貴、茂木栄五郎、高橋直樹がダイヤモンド狭しと走り回り、5/12が4人9回、5/13が4人7回、タイムクリアを果たしているのだ。
小技でかわされてきた東都との戦いの中で、相手の足もとをすくう走塁をようやく手の中に入れたという印象である。この機動力に杉山翔大の長打力を噛み合わせた総合的な攻撃力ははっきりと亜大を上回る。
不安は大味な試合が多かったリーグ戦の後遺症である。8勝のうち1点差勝利が5つだった亜大に対し、早大は9勝のうち5点差以上の勝利が6つもあった。接戦続きだった後半の明大戦、慶大戦でピリッとしたが、前半は明らかに厳しい戦いをしてこなかった。東都と決定的に違うリーグ戦のぬるさを選手権までの練習でどこまで埋められたか、早大にとってはベンチワークが大きなカギを握りそうだ。
2人エースで臨む九州共立大、大阪体育大が伏兵的存在。
大学選手権は東都大学リーグと東京六大学リーグだけのものではない。他大学リーグが全国区に名乗りを上げるため、虎視眈々と2大リーグの追い落としを狙う大会でもある。
第5回/関西大
第18回/東海大
第19回/中京大
第21回/関西大
第25回/東海大
第37回/近大
第38回/近大
第40回/東北福祉大
第46回/近大
第47回/近大
第50回/東海大
第52回/日本文理大
第53回/東北福祉大
第55回/大阪体育大
以上でわかるように、過去60回のうち東京六大学リーグ、東都大学リーグ以外から優勝校が出たのは14回もある。その結果、近大、東海大、東北福祉大を“地方リーグ”と言おうとすると、大きな抵抗感が生まれる。それぞれ4回、3回、2回も優勝しているのだ。実力的に見て、この3校は全国区と言っていい。