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亜大と早大が優勝候補の筆頭か。
大学選手権の注目選手を一挙紹介!!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/06/12 06:01
亜大・東浜は今春の東都大学リーグで5勝1敗4完封、防御率0.92の成績を挙げ、最高殊勲選手、最優秀投手、ベストナインの3冠に輝いた。大学選手権では早大・吉永との決勝での投げ合いを熱望している。
「東浜君の場合は最初からエースだから……」
――大学1、2年の時はストレートの割合が少なくて、見ていて爽快感がないんです。やってるほうもそうじゃなかった?
東浜 ありましたね。調子が上がらない中で抑えないといけないっていうのがあるので、難しいなぁと思えば変化球を使うしかなかった。
――東浜君の場合は最初からエースだから、ストレートを磨くという時間的な余裕がなかったと思う。
東浜 はい。
――もどかしくない?
東浜 もどかしいけど、それはそれで受け入れるしかないんで。
(『アマチュア野球32号』日刊スポーツ出版社)
このやりとりを紹介したのは、今も相変わらず調子が上がらない中で東浜がマウンドに立ち、納得できない中でもしっかり相手チームを抑えている点を強調したかったからだ。勝てる秘密は、単純に変化球とコントロールが良いからである。
変化球は3年まではツーシームの多投で打者を翻弄したが、今季はというと、カーブ、スライダー、フォークボールの中にツーシームを均等に配し、打者に的を絞らせないピッチングが目立つ。コントロールも安定し、0ストライク3ボールになっても四球を出す雰囲気がなく、狙われても芯を食わないツーシームをストライクゾーンに入れてカウントを整えていく。与四死球率は昨年までの2.62から2.44とわずかに減少している。
「スピードは135キロあれば十分。大事なのは変化球のキレと全体的なコントロール」と念仏のようにいろいろなところに繰り返し書いているのだが、実際にそういうピッチングで一級の成績を残しているのは、東京六大学と東都大学両リーグでは東浜と吉永健太朗(早大1年)だけだ。その2人が決勝で投げ合う可能性があるのだ。期待しないほうがどうかしている。
「亜大vs.早大」は「全力疾走vs.全力疾走」の“走力戦”になる!
東浜ばかりにスポットを当てたが亜大は打線もいい。
優勝から遠ざかった時期は打線に全盛期のような嫌らしさがなかったが、今年は強かった頃の亜大に戻りつつある。と言っても、今春の東都リーグ打撃10傑の中に亜大の選手は1人もいない。規定打数到達選手の成績を紹介しよう。
14位 中村毅 .278
16位 中村篤人 .277
18位 高田知季 .270
21位 藤岡裕大 .265
23位 北村祥治 .257
24位 柴田駿秋 .256
39位 嶺井博希 .182
40位 堀尾良馬 .167
これでよく勝てたな、と思う成績である。
チーム8勝のうち1点差勝ちが5回もある。逆に1点差負けは1回だけ。接戦を勝ち抜いて頂点に立つという戦い方はここ数年、東都の覇者が演じてきたやり方で、今年の亜大はそれをしっかり踏襲している。