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ヴォルフスブルク残留を決めた
長谷部誠には“永遠の課題”が。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2010/05/11 10:30
今季前半は怪我で出遅れたもののリーグ戦24試合に出場(第33節現在)。CLではグループリーグ6試合全試合出場を果たした
クラブ側は長谷部のプレー以外のあらゆる面も高評価。
二つ目の理由は、ヴォルフスブルクから高い評価を受けたからだ。
選手と契約するにあたって、クラブが注目する項目は多岐にわたる。ピッチ上でのパフォーマンス、チームメイトとの信頼関係、クラブやホームタウンなど環境への適応、サッカーに取り組む姿勢など、数え上げればきりがない。長谷部が海外メディアからのほとんど全ての取材にドイツ語で答えていることも、チームメイトと「良い関係を築けている」ことも、日本代表の試合から帰って来たあとにリーグ戦を戦うためにコンディションを整えようとグラウンドを訪れていることも、クラブ側は知っている。そして、その長谷部の人間性をしっかりと評価した。
昨季よりもアシスト数を増やしているのは長谷部ただひとり。
もちろん、ピッチ上でのパフォーマンスが最大の評価対象なのは言うまでもない。特に、これまで評価されてきた守備面ではなく、攻撃面でのパフォーマンスが向上した。例えば、アシスト数。昨季は3アシストに終わったが、今季は6アシストをマークした。
昨季、全34試合で80ゴールを挙げたチームは、今季は33節時点で61ゴールにとどまっている。中盤から前のポジションの主力選手たちが苦しむ中で、長谷部だけが昨季よりもアシスト数を増やしているのだ。
ヴォルフスブルクの地元紙「ヴォルフスブルガー・ナハリヒテン」紙は、アシスト数が増えた現状を、単純に長谷部の精度が高いからだと分析しているが、これは少し違う。
「正直、フリーでボールを蹴られれば、合わせる自信はあるから。以前から精度は変わらない。むしろ、いろんな形でアシストを出来るようになったことが、良かったと思う。例えばセンタリングだったら、低くて速いボールだったり、ファーにあわせるボールだったり。あるいは、スルーパスを通してアシストしたものもあったわけだからね」
狙いすましたクロスでエース・ジェコのゴールをアシスト。
また、エースのジェコに合わせた2つのアシストを比べてみても、成長の跡が読み取れる。
昨年9月30日、長谷部が初めてチャンピオンズリーグで先発出場を果たした、オールドトラッフォードでのマンチェスター・ユナイテッド戦。ジェコへのアシストについて、当時はこう分析していた。
「エディン(ジェコ)は極端な話、何となく上げたら入れてくれる感じがあるんですよ。このエリアに上げればいいんだな、というイメージでね」
だが、およそ7カ月後に行われたドルトムント戦、再びジェコへのアシストをマークしたときには、こんな風に振り返っている。
「中を見たときに、エディンとは目が合ったから。早いタイミングで、ダイレクトで入れようとしました。エディンはそういうタイミングでは欲しいなと思ったから」
漠然としたクロスから、狙いすましたクロスへ。変化の理由はどこにあるのだろうか。
「良い形でボールを呼び込めるようになったというのはあるかもしれない。良い形でボールを呼び込めれば、相手が来る前に中も見れるし、しっかりと蹴れる状態にあるから」