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ヴォルフスブルク残留を決めた
長谷部誠には“永遠の課題”が。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2010/05/11 10:30
今季前半は怪我で出遅れたもののリーグ戦24試合に出場(第33節現在)。CLではグループリーグ6試合全試合出場を果たした
VfLヴォルフスブルクとの契約満了が近づく中、長谷部誠は少しだけ不安を覚えていた。
「僕は、たくさん点をとる選手ではないし、完全に守備の選手というわけでもない。そういう選手は、なかなか評価されにくいところがあるのかなとは思っていたんですけど……」
だが、それは杞憂に終わった。これまで監督を務めてきたフェリックス・マガトやアルミン・フェーから高く評価されてきたのと同じように、ヴォルフスブルクのディーター・ヘーネスGMもロレンツ・ギュンター・ケストナー監督も、この日本人選手を買っていた。
「マコトはどんなチームであっても必要とされる選手だ」
長谷部は喜びをかみしめる。
「高い評価をしてもらったな、と。契約の交渉の中で一緒に話していても、チームに必要な選手だと思ってくれているんだなと感じたし、それは契約の内容なんかにも表れていたと思いますね」
プレミア、セリエAのクラブも長谷部を狙っていた。
彼を評価していたのは、所属チームだけではなかった。イングランドの複数のクラブが、ドイツでは中堅から上位に名を連ねるいくつものクラブが、彼に興味を示していた。イタリアからは、景気の良い話も聞こえてきた。
「ACミラン、フィオレンティーナを除くクラブは皆、彼(の動向)を追っている」
4月28日、ヴォルフスブルクと長谷部は今季終了後に切れる契約を2年間延長することで合意した。留まるべきか、行くべきか。半年近くにわたって、考えに考えてきた問題だ。残留することに決めたのは、何故なのか。
一つ目の理由は、チャンピオンズリーグ(CL)の興奮が忘れられないからだ。
「決勝トーナメント以降の注目度を見ていたら、やっぱりね……。自分たちがグループリーグで敗退したこともあって、余計に、またあの舞台でプレーしたいと思いましたね」
ドイツに住んでいれば、CLの注目度の高さがひしひしと感じられる。今季は特にそうだ。バイエルン・ミュンヘンが、すでに決勝へと駒を進めているからだ。だからこそ、長谷部には決勝トーナメント以降の戦いが現実のものとして感じられる。
「ただ、バイエルンとやっても、正直、そんなに差は感じなかったですよ。ブンデスリーガでもぶっちぎり優勝しているわけじゃない。バイエルンを過小評価しているわけではないけど、そこで世界との距離というのは測れているから。(バイエルンの躍進は)僕らもしっかりと戦えば、上にいけるんじゃないかなという気持ちにはさせてくれたかな」
ヘーネスGMは公言している。
「我々はバイエルンに次いで、ドイツ第2のクラブになるんだ」
今季のヴルフスブルクの順位は8位(*今季のデータは全て第33節終了時点のもの)。来季のCL出場圏には届かなかった。ただ、ヴォルフスブルクをコンスタントにチャンピオンズリーグに出場するチームにしていくというプランをヘーネスGMから聞かされたことが、長谷部が決断するに当たっての重要なファクターとなった。