リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
キャプテンでもレギュラー保証なし!
危機感募るスペイン代表カプデビラ。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byD.Nakashima/AFLO
posted2010/05/10 10:30
いつも明治神宮のお守りを持って試合会場に行くというカプデビラ。この験担ぎは有名で、Jリーグにも興味を持つ親日家である
シーズンも終盤を迎え、ワールドカップ開幕まで1カ月余りとなった現在、スペイン代表はトーレス、セスク、イニエスタらが長期離脱。復帰はワールドカップ開幕直前と見られており、果たして何人のレギュラークラスがコンディションを整えて本大会に臨むことができるか、地元では若干の不安が生まれ始めている。
その一方で、激しいポジション争いを繰り広げている選手達もいる。それは左SBのポジションを争う、ビジャレアルのカプデビラとレアル・マドリーのアルベロアである。
「俺は全部の試合で、死ぬ気で守って、攻める」
カプデビラはユーロ2008、南アW杯予選を不動のレギュラーとして戦ってきた選手。大方の予想はカプデビラがレギュラーとして本大会をプレーすると見ているが、本人は大きな危機感を抱いている。
それは今年3月に行われたフランスとの親善試合(0-2でスペインが勝利)で、デル・ボスケ監督がアルベロアを左SBでフル出場させたからである。この試合の翌々日、カプデビラに会うと、彼は少しすねていた。試合に出たかったと何度も言っていた。カプデビラに「デル・ボスケは本大会用に左サイドの控え選手を試したかったんじゃないかな」と言うと、彼はこう言った。「俺は全部の試合で、守備も攻撃もしっかりとやって見せるよ。それこそ、死ぬ気で守って、攻める」。
多くの選手にとってそうであるように、カプデビラにとっても今回のワールドカップは特別な大会だ。彼はシドニー五輪、ユーロ2004、ユーロ2008のメンバーに入ってきたいわゆるスペインのエリートSBであり、スーペル・デポルと謳われた黄金期のデポルティーボの一員でもあった。
最後のW杯に懸けるカプデビラの高いモチベーション。
だが、その中で彼が不動のレギュラーだったチームは2008年のユーロ優勝チームだけである。彼はエリートとしてのキャリアを歩みながらも、レギュラーの座を勝ち取るまでに多くの時間をかけてきた。とりわけ、W杯ドイツ大会ではレギュラー候補だったデル・オルノが大会直前に負傷離脱し、その代役として最終候補に挙げられながら、アラゴネス監督は直前にスペイン国籍を取得したアルゼンチン出身のマリアーノ・ペルニアを選出。カプデビラは目前でワールドカップメンバー入りを逃している。
そういった経緯に加え、2月で32歳になったことも、今回が最後のW杯出場のチャンスだという彼の気持ちを強くさせている。だからこそ、彼は1試合に出場できなかっただけでも、不安になり、大きな危機感を抱いたのだった。
だが、その危機感をモチベーションに代えるのがカプデビラであることを彼は示した。フランス戦直後の第25節から34節までカプデビラは全試合にフル出場を果たす。終盤、一気に順位を上げて来季CL圏内入りも見えてきたビジャレアルの中で、彼は左サイドから攻守のバランスを整え、文字通り、ビジャレアル浮上の原動力となった。レギュラー候補であるカプデビラのこの猛烈なアピールは指揮官デル・ボスケの目にはどう映っているだろうか。