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世界最終予選で苦戦した女子バレー。
それでも五輪でメダルを狙える理由。
text by
小川勝Masaru Ogawa
photograph byJun Tsukida/AFLO SPORT
posted2012/05/28 11:45
ついに3大会連続となる五輪出場を決めた眞鍋ジャパン。今大会において金軟景(韓国)、ガモワ(ロシア)に続く多数のスパイクを決めたエース・木村沙織(写真左)と、チームの頭脳として活躍した竹下佳江(写真右)がお互いを祝福し合う。
「ジャンピング・フローター」サーブの驚くべき威力。
サーブに関して、日本が世界の最高峰にあることは世界最終予選でも証明された。
ロシア戦は0-3で敗れたものの、日本のサービスエースは実に12本。トップレベルの試合で、サービスエースが二ケタになることはめったにない。サーブミスは6本で、サーブにおける得失点差がプラス6点というのは、世界の強豪同士の試合では抜群の数字だ。オリンピック出場を決めたセルビア戦でも、日本は86本のサーブを打ったが、セルビアがセッターにピタリと返した「成功レシーブ」は、わずかに17本だけだった。この2試合が、日本のサーブ力をよく表している。
2008年から採用された国際使用球は、打つ選手がよりコントロールしやすくなるように、ボール表面のパネルの枚数が減った。このため、変化球サーブを打つと、以前のボールより変化しやすくなった。眞鍋監督は東海大学の研究室に依頼して、どれくらいのスピードで打つと最も変化しやすいか調べるなど、新しいボールを研究した。その結果、ジャンピング・フローターが有効との結論を得て、2010年から、代表チームに呼んだ選手で、変えられる選手にはサーブを変えさせた。
ジャンピング・フローターなら敵の弱点をピンポイントに狙える。
荒木絵里香、江畑幸子、迫田さおりは、それまで通常のフローターサーブやスパイクサーブを打っていたが、ジャンピング・フローターに変えている。このサーブを行う利点は、ボールが変化しやすいだけでなく、狙ったところに打つコントロールも付けやすいことだ。
従来からこのサーブを打っていた竹下佳江、木村沙織らと合わせ、日本はほとんど全員がこのサーブをマスターした。このため、情報分析で分かった「狙いどころ」を、チームとしてより正確に狙えるようになった。
サーブは、体格とは関係なく、世界のどの国とも対等に勝負できる唯一の攻撃プレー。ジャンピング・フローターの成功は、日本を世界のメダル候補に押し上げる、大きな武器になったと言える。