プロ野球亭日乗BACK NUMBER
つまづきの原因は「2番打者」だけ!?
巨人打線復調の鍵はV9時代にあり。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2012/04/14 08:00
31イニング連続無得点に3試合連続完封負けと、球団ワースト記録に並ぶほどの貧打に陥っていた原巨人。思いきった采配が望まれるところである。
31打数で2安打1死球の10三振……原監督が動いた。
ところがフタを開けてみればオープン戦で3割に近い打率を残したボウカーのバットがまったく湿りっぱなしだった。
開幕から3カード、8試合に2番で起用されて31打数で2安打1死球の10三振。この内容に、たまらず原辰徳監督は4月8日の阪神戦から2番打者をベテランの谷佳知と入れ替えた。
最初に書いたように開幕からの巨人の得点力不足は、打線の相対的な不振であり、もちろんボウカーだけが原因ではない。ただ、この2番の入れ替えがきっかけとなって、ようやく巨人打線は少しずつ息を吹き返し始めたというのは事実だった。
打撃不振のときに、ただ打つだけの打線では打開策は得られないのは、野球ファンならだれもが思うことだろう。そういうときこそ1、2番に求められるのはアウトになるにしても粘って投手に球数を投げさせたり、塁に出れば大きくリードオフをとってプレッシャーをかける、またスキあらば走ってかき回すような細かい野球となるはずだ。
だが、もともと坂本もボウカーもそういうタイプの選手ではない。それでは2人がどれだけ攻撃型として機能したかというと、開幕からのボウカーが2番に座った8試合では、坂本が9回出塁して1、2番が有機的につながったのは送りバント1回と開幕戦の9回に連打でつながった2回だけだった。
V9時代の打順に打線活性化のヒントが隠されている!?
ただ、それでは谷がボウカーとは違った“つなぎの2番打者”なのかといえば、これもまた少し違うのではないだろうか。
谷の場合はバントもできるし右打ちもできる。ただ、一番の魅力はやはり打撃力、簡単に言えばヒットを打てる打撃技術だ。そういう意味では、谷もまた、攻撃型の2番打者に近い選手なのである。
そこで考えるのが、もう一つの打順の選択肢だ。
それは投手を8番に入れて、9番に足があって小技のできる選手を起用する。例えばいま8番を打つことの多い寺内崇幸や俊足の藤村大介あたりである。こういう選手を9番に使って、9番から攻撃的な1、2番に打線をつなげるという考えだ。
実はこれはV9時代の巨人がよく使った編成で、1965年から73年までの全1192試合のデータを分析した「V9巨人のデータ分析」(光文社新書、小野俊哉著)によると、8番打者の22.7%を投手が占めていたのだという。
即ち4試合中1試合は8番に投手を起用し9番に土井正三や黒江透修らをもってきて、柴田勲、高田繁という攻撃型1、2番コンビにつなげていたわけである。