ロンドン五輪代表、最大の挑戦BACK NUMBER
バーレーン戦で見せた成長と可能性。
関塚ジャパンが得た3つの武器とは?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAsami Enomoto
posted2012/03/15 12:30
バーレーン戦で2点目を決めた清武弘嗣は試合後、「“経験”で済ますだけじゃなく、本当にメダルまで狙っていきたい。そのためにも、もっといいチームになりたい」と五輪本番へ向けて力強く語った。
世界と戦う時に必要になる“耐える力”とは?
2つ目は、「我慢」だ。
「以前は押し込まれると我慢できなくて、失点することが多かった。でも、今日の試合もそうですが、みんな必死に耐えることができるようになった」
こう山口は語る。
バーレーン戦で、攻撃陣は前半途中から相手の守備ブロックを崩すのに手こずり始め、あと少しなのにゴールを奪えないという嫌な時間帯を味わうこととなった。その間、守備では鈴木大輔らDF陣はもちろん、清武弘嗣や大津祐樹、原口元気もスライディングを見せるなど、みんな体を張って難しい時間帯をしのいだ。あと一歩前に出れなかったチームが、一歩前に出て守備をし、膠着した状況でさえ相手の攻撃の芽だけは潰していたのだ。
五輪本番を含め、世界を相手に戦う時は、自分たちのリズムでプレーをさせてもらえないことの方が多い。そんな時、いかに相手の攻撃をしのぎ我慢できるかで試合の趨勢も決まってくる。
「耐えることができるっていうのは、目に見えない大きな武器やと思います」
山口がこう語る通り、確かに我慢という武器にはまったく派手さが無い。それでいて、相手が強い場合は非常に大きな効果を発揮するという、世界と戦う上では必要不可欠な武器でもあるのだ。
攻撃のイメージをチーム全体で共有できるようになった。
3つ目は、「イメージの共有」である。
このチームは攻撃陣にタレントが多く、前線の4人で点を取るイメージが強い。サイド攻撃がチームの特徴だが、戦術的な意図も無いままなんとなく彼らに任せてしまう傾向があった。
今回のゴールは、比嘉のパスを原口が受け、仕掛けて出したマイナスのパスを扇原がスペースに飛び込むことで決めている。
扇原は、「元気クンから(パスが)来ると思って走った」と語っており、原口も「ニアのゾーンに誰かが入ってくると思ったし、タカ(扇原)の姿が見えたんでいいタイミングで出せた」と証言している。この得点シーンでは、見事にお互いのイメージがシンクロしていたのだ。
サイドバック、攻撃的MF、ボランチと三者が絡んでのゴールは、攻撃のイメージをチーム全体が共有しているという証拠となる。さらに言うと、世界との戦いで点を取るためには、いわゆる2列目、3列目の飛び出しという今回のような得点パターンは非常に有効でもある。
試合後の原口の言葉を借りると、こういうことになる。
「ドリブルで仕掛けて点に絡んだり、もっとイメージを共有して攻撃のバリエーションを増やしていければ、ひとつの手段を封じられても焦らずに戦える。チームは、そうなってきているし、もっと強くなると思います」