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ザックは今、“何”を探している!?
石川直宏に続き宮市亮を呼んだ意味。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/02/27 12:20
「彼(宮市)はA代表でプレーするチャンスはある」と語ったザッケローニ。これまでも、宇佐美貴史、久保裕也、柴崎岳ら10代の選手を招集してきたが、宮市への期待度は1ランク違うものを感じさせる
ジョーカー候補の駒が絶対的に足りないという現実。
そして、指揮官がこの試合でテストしたかったことの一つに“後半の勝負どころ”があった。
つまり、サイドで主導権を握りながら誰をスーパーサブで使って、いかにゴールをもぎ取るか――。
これまでジョーカー的な役割でコンスタントに起用されてきたのは清武弘嗣ぐらいだ。その清武はケガやU-23代表での活動優先もあって今回は招集できなかったものの、そもそもジョーカー候補の駒が絶対的に足りないのが現実だ。
数的優位をサイドでつくり続けていけば、時間の経過とともに相手が疲弊してくるのは当然。相手とフィジカルで勝負できる大久保を先発で使ったことも、そういう理由があったはずだ。ただ、この日はそのミッションを意識づけることが最大の狙いであり、相手を消耗させるまでには至らなかった。それでも指揮官は2-0で迎えた後半19分、スピードで勝負する石川直宏をチョイスしてピッチに送り出した。
指揮官に言われなくとも、石川は自分のやるべき仕事を理解していた。
「ヤット(遠藤)さんやケンゴ(中村)さんがパスを出そうと顔を上げて見てくれているので、サイドからの飛び出しを狙っていました。自分のストロングポイントをそのまま出せばいいんじゃないかと思っていたので」
石川の“右サイドでの起用”に込められたメッセージ。
相手が引いてスペースを消してきたこともあって、持ち前のスピードを活かす場面をなかなかつくれなかったが、スピードを見せてけん制することで相手にストレスを与えていた。「もっと周囲と連動できればよかった」と課題を口にしたが、石川の投入によって一定の効果はあったと言える。
ザッケローニも手ごたえをつかんだに違いない。
2列目左サイドの大久保や右サイドで先発した藤本淳吾は、利き足とは逆のポジションでの起用だったが、右利きの石川をそのまま右サイドに送り込んだことは実に興味深かった。チーム全体で「縦」にトップギアを入れるためのメッセージであったように筆者は感じた。石川はこう話している。
「同サイドにボールがあるときは自分が右に張って、逆サイドにあるときはセカンドストライカーのように入っていく意識。基本はサイドでよりワイドにプレーして、周囲と連動しながら攻めていくイメージでした」
サイドでスピードに乗って相手を突くことによって、相手ディフェンダーを引っ張り出せる。それに最終ラインにギャップを生み出すことができる。これが石川のようなスピードタイプに指揮官がジョーカーとして期待を高めている最たる理由だろう。