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香川離脱に見るドルトムントの深謀。
代表招集を巡る日独の温度差とは?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byItaru Chiba
posted2012/02/22 10:31
後半戦に入り、公式戦5試合で4ゴールと絶好調だった香川。1日も早い復帰はファンもクラブも望むところだ
ザッケローニ監督が自らドイツに乗り込めば……。
例えば、2010年の4月25日。当時の日本代表を率いていた岡田武史監督が、フライブルクで行なわれたヴォルフスブルクの試合に足を運んだ。長谷部誠のプレーを視察するためだ。この試合が終わると、岡田監督は足早にタクシーでスタジアムを後にしたのだが、ここにもちょっとした出来事があった。
スタジアム周辺の渋滞を防ぐために、車両の入場規制をしており、タクシーもその対象になっている。しかし、日本代表監督が視察に訪れていることを聞いたフライブルクの広報が、交通整理を担当する地元警察とタクシー会社にかけあい、特別にタクシーをスタジアムのすぐそばまで近づくように手配していた。
ルールをかたくなに守ることで、しばしばジョークの対象にされるドイツ人らしからぬ、寛容な対応だった。それが代表監督への敬意の表れでもあった。
まして、ザッケローニ監督はイタリアのビッグクラブを率いた経験がある。所属選手が代表での活動に呼ばれるときにどんなやりとりが問題になるのか、逆に、どうすれば代表とクラブが良い関係を築けるのか、そのノウハウを持っているのではないか。
選手がピッチの上での戦いに集中できるように、ファンがピッチの上に声援を送ることに集中できるように、今、日本サッカー界の総合力が試されているのだ。
選手を、ファンを、苦しませてはいけない。