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香川離脱に見るドルトムントの深謀。
代表招集を巡る日独の温度差とは?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byItaru Chiba
posted2012/02/22 10:31
後半戦に入り、公式戦5試合で4ゴールと絶好調だった香川。1日も早い復帰はファンもクラブも望むところだ
招集にかかわる問題は日本人選手が重要視される証左。
2月29日のウズベキスタン戦で芳しくない成績を残せば、FIFAランキングに影響が出ることは間違いない。FIFAランキングを大きく落とすと、最終予選での日本のシード権にも影響が及ぶ。そして、この試合は6月から始まる最終予選を前にした、最後の実戦の場でもある。日本代表にとっては大事な試合なのだ。
ただ、日本人にとっては大事な代表戦でも、第三者であるドルトムントからすれば、すでに最終予選進出を決めているチームの消化試合と映ってしまうのだ。
ヨーロッパでプレーする日本人選手の招集にかかわる問題は、何も今に始まったことではない。ドイツ国内だけで、短い間に似たような問題が続けて出てくるのは、日本サッカーのレベルが上がっているからでもある。
昨年1年間を振り返ってみても、ヨーロッパでプレーする選手のうちで香川、長友佑都、本田圭佑、森本貴幸、内田篤人などが負傷のために1試合以上の欠場、あるいは代表招集を辞退している。
日本人選手の所属クラブでの役割が増せば増すほど、あるいは高いレベルに行けば行くほど、激しいプレーや連戦が続く。同時に、怪我のリスクもつきまとってくる。
招集問題の解決は協会の首脳陣がクリアすべき課題だ。
いま、ドイツで起きているのと似たような問題は、2002年のW杯を前にトルシエ監督が代表チームを率いていた時から続くものでもある。つまり、古くて、新しい問題なのだ。となれば、この問題を解決するのは“大人たち”の役割だ。
こまめにヨーロッパへ足を運ぶ原博実強化委員長のここまでの功績は軽視してはいけないが、同時に他の手段を探っていく必要があるのではないだろうか。
五輪予選に関して言えば、将来の日本の五輪代表の選手が若くして海外でプレーする可能性を見越して、日本がアジアの中でイニシアチブをとり、国際Aマッチデーに試合を行なう道筋をつけてもいいかもしれない。
そして、A代表に関しては、例えばザッケローニ監督が、もっと手を貸してもいいだろう。少なくともドイツでは、代表監督に関するリスペクトは、思いのほかに高い。この国で代表チームへの関心と敬意が高いこととは無関係ではないだろう。