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香川離脱に見るドルトムントの深謀。
代表招集を巡る日独の温度差とは?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byItaru Chiba
posted2012/02/22 10:31
後半戦に入り、公式戦5試合で4ゴールと絶好調だった香川。1日も早い復帰はファンもクラブも望むところだ
中心選手を代表に招集されたくないのが監督の本音か。
前回は、昨年8月。日本代表は札幌で韓国代表を3-0で退けている。香川が2ゴールを決めた試合だ。
この韓国戦の直後の土曜日に、ドルトムントはアウェイでホッフェンハイムと対戦。0-1で敗れている。敗戦の苛立ちがあったとはいえ、試合直後にメディア対応の上手いクロップ監督は日本人記者を前に苦言を呈した。
「君たちの国の代表選手を、シーズン開始早々から色んなところに連れまわさないほうがいいのではないか」
この試合ではドルトムント所属のドイツ代表選手たちも、低調なパフォーマンスに終始しており、香川と日本人ばかりが責められる道理はなかったのだが……。ただ、当時のことがクロップ監督の頭によぎらないと、誰が言えるだろうか。
“極東”への移動にかかる身体の負担が不安材料に。
確かに、長時間の飛行機移動にはリスクがつきまとう。
昨年の日本代表の試合でも、そういうケースはあった。ヨーロッパでプレーする、ある選手が、2試合をこなすスケジュールで帰って来たものの、軽い怪我のために最初の試合を欠場したことがあった。そのときは、怪我が悪化した要因として、「疲れや移動の影響もあって」と明かしていた。
実際、ファンやメディアに知られない程度の軽い怪我をかかえながら試合に出場する選手は少なくない。それは選手たちのプロ意識の表れでもある。ヨーロッパで試合を終えた直後に慌ただしく、日本へ帰国する過程で、軽いけがの症状を悪化させるのを避けられないこともあるのだ。
しかし、それ以上に、ドイツで日本人選手を取材している中で感じるのは、各クラブの監督に始まり、GMやSD(スポーツディレクター)がドイツと日本の往復で選手にかかる負担を深刻にとらえすぎているのではないかという懸念である。
もっとも、その理由はドイツで世界地図を開けば、一目瞭然。日本が地図の右端に描かれているからだ。
ドイツ人からみれば、日本は“極東”に位置する。遠い、遠い国なのだ。選手のコンディションの悪化の可能性を過度に心配するのも仕方がないのかもしれない。