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香川離脱に見るドルトムントの深謀。
代表招集を巡る日独の温度差とは?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byItaru Chiba
posted2012/02/22 10:31
後半戦に入り、公式戦5試合で4ゴールと絶好調だった香川。1日も早い復帰はファンもクラブも望むところだ
1つのニュースが、実はある大きな問題を浮かび上がらせている。
2月16日の木曜日、試合を2日後に控えたドルトムントのクロップ監督が、記者会見で気になるコメントを発した。
「(香川が)水曜日の1対1の練習中に(左足首のじん帯を)痛めた。最初は少しだけ足を引きずっているように見えたのだが、そのあとに悪化したようだ。ヘルタ戦(18日)、ハノーファー戦(26日)はノーチャンスだ。(クラブの担当医である)マルク・ブラウン医師は『マインツ戦(3月3日)での復帰を目指しましょう』と言っている」
ブンデスリーガで旋風を巻き起こしている香川負傷のニュースとクロップ監督の発言は、瞬く間にドイツ中を駆け巡った。
“最大”で3週間の離脱だが、早期復帰の可能性も示唆。
気になるのは、このあとのドルトムントの動きである。
オフィシャルホームページでは、まず、速報として香川が最大で3週間の離脱というニュースが発表された。
それからしばらくして、少し表現を変えたニュースがリリースされた。そこにはこう書かれている。
「少なくともベルリン戦(2月18日の試合で、1-0でドルトムントが勝利)は欠場で、『おそらく』(2月26日に行なわれる予定の)ハノーファー戦も(欠場の可能性がある)」
ドルトムントの2度目のリリースの要点については、香川も自身のホームページで言及しており、同時に1日でも早い復帰を誓っている。
実際、負傷したとされる2月15日の練習の中で行なわれた紅白戦で、香川は、主力組のトップ下の選手として最後までプレーしている。練習後には、遊びに来ていたチームメイトの子供と数分ではあったが、一緒にボールを蹴ってあげていた。あまりの痛みに耐えかねて、グラウンドを後にするほどの怪我ではなかったということだ。
香川の強靱なメンタルをもってすれば回復は早い?
ハノーファー戦はホームで行なわれるのだが、今年に入ってからのホームゲーム2試合で3ゴールを決めているチームのスター選手である香川の復帰をファンが望まないはずはない。
また、昨年1月に右足小指の付け根を骨折した香川は、日本で精力的なリハビリを続けて、周囲も驚くほどの回復を見せた。メンタルと怪我の治り具合の関連性については広く指摘されていることでもあり、何より香川自身がこのときに強靭なメンタリティの持ち主であることを証明している。
さらに、昨年1月にアジアカップで負傷した直後に大会の行なわれていたカタールからドルトムントに戻った際、香川がすぐに気持ちを切り替えて1日でも早い復帰を目指す姿勢を見て、クロップ監督は驚いている。その記憶が吹き飛ぶ可能性はない。彼らが香川の早い復帰を予測できないとも思えない。