MLB東奔西走BACK NUMBER
ダルビッシュとメジャーを熟知する男、
木田優夫が語る「約束された成功」。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2012/02/08 10:31
アリゾナ州サプライズで行なわれるレンジャーズのキャンプインは2月23日を予定している。メジャーのマウンドで投げるその日を、現地のファンも心待ちにしている
レンジャーズ本拠地でホームランが出やすい本当の理由。
すでに日本でも報じられているように、レンジャーズの本拠地「レンジャーズ・ボールパーク・イン・アーリントン」は打者有利の球場として知られている。
一部報道では同地が乾燥するためボールが飛びやすいと解説しているようだが、実際は球場の狭さと独特のホームラン風の影響だ。この球場は四方が観客席に覆われているため、上空では大抵右中間からホーム方向に吹く風が、観客席に跳ね返り、球場内では反対にホームからセンター、右中間方向に風が巻いているのだ。これが球場の狭さと相まってホームラン、長打を生み出す要因になっている。
シーズン | 本塁打数 | 打率 | チーム防御率 |
---|---|---|---|
1994 | 130 (7位) | .283 (3位) | 5.45 (13位) |
1995 | 154 (8位) | .273 (6位) | 4.66 (8位) |
1996 | 198 (6位) | .288 (2位) | 4.65 (5位) |
1997 | 181 (6位) | .284 (3位) | 4.69 (7位) |
1998 | 179 (5位) | .299 (1位) | 4.99 (12位) |
1999 | 202 (3位) | .296 (2位) | 5.07 (11位) |
2000 | 204 (4位) | .293 (2位) | 5.52 (14位) |
2001 | 223 (1位) | .286 (1位) | 5.71 (14位) |
2002 | 231 (1位) | .281 (2位) | 5.15 (12位) |
2003 | 232 (1位) | .290 (1位) | 5.67 (14位) |
2004 | 203 (3位) | .278 (2位) | 4.53 (5位) |
2005 | 224 (1位) | .275 (4位) | 4.96 (12位) |
2006 | 170 (6位) | .278 (3位) | 4.60 (8位) |
2007 | 156 (6位) | .268 (10位) | 4.75 (11位) |
2008 | 195 (2位) | .292 (1位) | 5.37 (14位) |
2009 | 207 (2位) | .269 (6位) | 4.38 (8位) |
2010 | 169 (4位) | .265 (5位) | 3.93 (3位タイ) |
2011 | 223 (1位) | .275 (1位) | 3.79 (5位) |
この球場が打者有利というのはデータの上でも明らかだ。球場がオープンした1994年以降の同球場での本塁打数、打率、さらにチーム防御率を表にまとめてみた。括弧内はリーグ内の順位(本塁打数、打率に関しては交流戦が始まった1997年以降はア・リーグの本拠地球場のみの順位)だ。
球場ができた1994年以降、ひとりもいないサイヤング賞投手。
もちろんこれらの数字はレンジャーズのシーズンごとの戦力にも影響される部分が多いが、昨シーズンなどはある程度投手陣が健闘していながらも、本塁打数、打率はリーグ1位になっている。それだけこの球場ではどうしても攻撃主体の野球にならざるを得ない実情が浮き彫りになってくる。
それを反映するように、1994年以降のレンジャーズ先発投手の中で、最多勝もしくは最優秀防御率のタイトルを獲得したのは1998年のリック・ヘリング投手(20勝で2投手と並ぶ)ただ1人しか存在しない。
しかも、これらのタイトル獲得が絶対条件となるサイ・ヤング賞に至っては誰も受賞しておらず、同賞で投票された投手(中継ぎ投手を含めた)ですら1996年のケン・ヒル投手(6位タイ)、1999年のアーロン・シーリー投手(5位)、ジョン・ウェッテランド投手(6位タイ)、2011年のC・J・ウィルソン投手(6位)の4人しか存在しないのだ。
レンジャーズに在籍しながら先の付帯条項をクリアするのはメジャー球界では奇跡に近いことなのかもしれない。