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香川真司が昨季より更に進化した!
絶好調の要因は剥き出しの「エゴ」。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byItaru Chiba
posted2012/02/03 10:31
19節現在、香川は6ゴール、6アシスト(リーグトップタイ)をあげ、チームも2位につけている
エゴを出しながらもチームプレーに徹した。
しかし、ホッフェンハイム戦の3つのゴールを検証していくと、あることに気がつく。
先制ゴールの場面では、相手GKシュターケにボールが戻されたあと、1トップのレバンドフスキが左サイドへのパスコースを消しながら、GKにプレッシャーをかけにいっていた。香川は、中央やや左サイドにいたベステルゴーアをマーク。仕方なくGKシュターケが右サイドにいたアンカーのルディにパスを出すと、ドルトムントのボランチに入っていたケールがまんまとボールをさらうことに成功し、香川へパスを送ることができたのだ。前線からの守備というチームの約束事をすべての選手が守っていたからこそ生まれた、計算通りのゴールだった。
あるいは、クーバのクロスをグロスクロイツが決めたチーム2点目のシーンもそうだ。
相手の左サイドバックを務めたブラーフハイトにレバンドフスキがプレッシャーをかけ、香川がパスを奪う。そこから縦に走ったクーバへ展開したことで、ゴールに結びついた。
チーム3点目となった後半10分の香川のゴールも同じことが言える。S・ベンダーからのパスを相手がカットしそこなってこぼれたボールを香川が拾う。すると、守備から攻撃への切り替えを口を酸っぱくして説いているクロップ監督の指示通りに、レバンドフスキ、クーバ、グロスクロイツの3人は素早く前へ走り出した。香川は躊躇することなくグロスクロイツへパスを出し、その折り返しを自ら決めて見せた。
チームメイトのゴールへの意欲が香川を奮い立たせる。
各選手がゴールへの意欲をむき出しにしているのは間違いない。しかし、その前にはチームとして求められているプレッシングや攻守の素早い切り替えを休むことなく実践しているのだ。
現在のドルトムントはエゴを出すことがチームプレーと矛盾しない。だからこそ、迫力のある戦いが出来ているのだ。
試合後に、ドイツに来てから初めてのハットトリックを達成したかったのではないかと問われた香川は即答した。
「もちろん! ただ、やっぱりみんなもゴールを狙っていたから。前節と同様にね(笑)。 それくらいみんな、試合の中で、自分を出しますから、それに負けじと自分ももっともっと出し続けていけたらいいのかなと思います」