ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
香川真司が昨季より更に進化した!
絶好調の要因は剥き出しの「エゴ」。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byItaru Chiba
posted2012/02/03 10:31
19節現在、香川は6ゴール、6アシスト(リーグトップタイ)をあげ、チームも2位につけている
「もっと自分を出して、シュートまでいかないと」
さらに、件のHSV戦では6月にEUROをウクライナと共同開催するポーランドの代表監督が視察に訪れていたことで、同国の代表であるレバンドフスキとクーバは、燃えに燃えていた。香川がパスを求めても、強引にシュートを打ち続けていたし、こんなやり取りもあった。
後半31分にライトナーが倒されてドルトムントがPKを得た。本来のキッカーはフンメルスだが、クーバがボールを拾いにいく。この時点でクーバはすでにゴールを決めており、まだ得点のなかった香川もPKを蹴りたがったが、クーバはボールを離さなかった。すでに3点差がついていたこともあり、クーバの行動にはおとがめなし。そして、クーバはそのPKを決めて、自身2点目をあげた。彼は代表チームではPKのキッカーを務めているのだ。監督が視察に訪れた試合で、PKにこだわったのは偶然ではない。
試合後に香川はこう語っていた。
「PKは蹴らせてほしかったんですけど、クーバは全然言うこときかなかった(笑)。僕も負けていられないし、もっと自分を出して、シュートまでいかないと」
1月28日のホッフェンハイム戦を迎える前には、そんなやり取りがあったのだ。
「強引にドリブルで行けたことで『エゴ』を出せた」
だからこそ、香川はゴールを決めることを強く意識していた。それが明らかになったのは、前半16分のこと。
香川は、ケールがカットしたボールをペナルティエリアの手前で受けた。目の前には相手のセンターバック、左にはフリーでレバンドフスキがいた。相手、味方の人数こそ違えど、前節では似たような位置でボールを受けた際にパスを選択して、グロスクロイツのゴールをおぜん立てしている。
だが、この試合で香川はドリブルで自ら仕かける道を選んだ。目の前にいたベステルゴーアをかわして、ペナルティエリアに進入すると、キーパーの動きを見て、ゴール右下隅に冷静に流し込んで先制ゴールをマークした。
「自分の頭をよぎったのは、『今日はいかないといけない』ということ。それで、ドリブルを仕かけました。もちろん、パスの選択肢もありましたけど、今日はゴールを重視していたので、強引にドリブルで行けたことは、自分で『エゴ』を出せたというかね、良さを出せたんだと思います」
ここで言う、エゴ(ego)がキーワードになる。
日本語に当てはめると「うぬぼれ」や「自尊心」に当てはまる言葉は、一歩間違えればチームの崩壊を招く。