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香川真司が昨季より更に進化した!
絶好調の要因は剥き出しの「エゴ」。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byItaru Chiba
posted2012/02/03 10:31
19節現在、香川は6ゴール、6アシスト(リーグトップタイ)をあげ、チームも2位につけている
「今の君はもう十分あの頃をこえているよ」
漫画『スラムダンク』で安西先生が言った名ゼリフも、今の香川真司にならあてはまるだろう。
後半戦最初の試合となったハンブルガーSV(HSV)戦では、グロスクロイツの先制ゴールをアシストするなど、攻撃の中心として存在感を放った。『キッカー』誌や『ルールナハリヒテン』紙など、多くのメディアが、この節のベストイレブンに選出した。
しかし、試合後にはゴールを奪えなかったことを残念に思っていると吐露し、ゴールを奪えないまま途中交代を命じられたことに少しだけ不満も漏らしていた。
「今はパスに酔っている自分がいるのかな。それじゃダメ」
そんな中で迎えた翌週のホッフェンハイム戦。ホッフェンハイムには2連敗中で、これまで一度もホームゲームで勝ったことはなかったが、3対1というスコア以上に試合内容で圧倒して、勝利を収めた。その試合は、香川の独壇場になった。自身で2ゴールを決め、グロスクロイツのゴールも香川が相手ボールを奪ってからの攻撃で決まった。ちなみに1試合2ゴールをマークしたのは、昨シーズンの9月に行なわれたシャルケとのレビアー・ダービー以来のことだ。
ブラチコフスキ投入の恩恵を受けた香川の大爆発。
ホッフェンハイム戦での爆発には、いくつかの伏線があった。
まず、シーズン後半戦初戦を前に、前半戦のドルトムントを牽引してきたゲッツェの長期欠場が決まった。恥骨炎の悪化が原因で、復帰は早くても3月、最悪の場合は4月にずれ込むとも見られている。ゲッツェを欠くドルトムントは、首位争いをくりひろげるバイエルン、シャルケ、ボルシアMGなどのライバルに太刀打ちできないのではないかと見る向きもあった。
確かに、ゲッツェの欠場は、攻撃のバリエーションという面で見れば、チームに大きなマイナスだ。ただ、代わりに入ったブラチコフスキ(登録名、通称はクーバ)は、チームの生命線である激しいプレッシングと守備から攻撃への素早い切り替えという面での貢献度がゲッツェよりも高く、ここまではそれがチームの攻撃に活きている。その恩恵は当然、香川も受ける。