プレミアリーグの時間BACK NUMBER
勝ち試合を落とす“優勝争い初心者”、
トッテナムに立ちふさがる二強の壁。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2012/02/02 10:30
爆発的なドリブルでタッチライン際を蹂躙するギャレス・ベイル。今季は崩しだけでなくフィニッシュの精度も向上し、世界屈指のサイドアタッカーに成長した
プレミアリーグ第22節では、事実上のトップ4同士の直接対決が実現した。メディアに“スーパーサンデー”と銘打たれた1月22日の2試合のうち、試合前後の報道でメインイベントとして扱われたのは、アーセナル対マンチェスターU(1-2)ではなく、マンチェスターC対トッテナム(3-2)だった。
44年ぶりのリーグ優勝を予感させる、首位マンCの強さもさることながら、51年ぶりのリーグ優勝も不可能ではないと思わせる、トッテナムの躍進を反映した注目度だろう。
トッテナムが優勝候補と目され始めたのは、リーグ戦で3カ月間無敗を続けた昨秋のこと。昨年9月の第4節ウルブズ戦(2-0)を皮切りに、引分け1試合を挟む破竹の10連勝を記録したのだ。8月の2試合では、マンチェスターの両雄に合計8失点で連敗していただけに、翌月から連勝街道を走る様子は、ひと際強烈な印象を与えた。前回、開幕直後に本コラムでトッテナムに触れた際には、「リバプールとアーセナルをホームに迎える2試合に注目」と結んだのだが、トッテナムは、4位争いのライバルと思われた両軍からも、合わせて6得点と6ポイントを奪ってみせた。
パーカーとモドリッチの中盤コンビが攻守を牽引する。
好転の要因はスコット・パーカーの加入だ。夏の移籍市場最終日に手に入れたイングランド代表MFは、中盤の守備力不足が指摘され続けたトッテナム待望の新ボランチ。パーカーは、デビューを飾ったウルブズ戦で、今季初の無失点勝利を実現すると同時に、先制点までアシストして見せ、移籍から2カ月連続でチーム内の月間MVPに輝いた。豊富なスタミナと力強いタックルを駆使して、移籍後の5カ月で披露したパスカットやシュートブロックは数知れない。
パーカーが奪ったボールは、中央でコンビを組むルカ・モドリッチを介して、自軍のチャンスに変わる。プレーメイカーとしての実力は元々折り紙つきだったが、昨夏に志願書まで提出したチェルシー移籍が夢に終わった後、黙々とトッテナムのために仕事をこなす精神力とプロ意識の高さには、改めて感心させられた。今冬の市場で移籍の噂が再熱することなく再びチームが揺れずに済んだのも、チェルシーへの未練を口にすることもなければ、離れかけたトッテナムに許しを請うような発言もせず、ひたすらプレーに徹したモドリッチの姿勢があればこそだ。