Jリーグ観察記BACK NUMBER
マリノス・木村和司は名将か?
「会見力」で試される監督の能力。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2010/03/26 10:30
大量得点での連勝で、采配も発言も絶好調の横浜F・マリノス、木村和司監督
オシム監督はミステリアスな言葉で皆を酔わせた。
最後の「神秘性」とは、あえて説明しないことによってミステリアスさをかもし出す能力のことだ。
これまでの2つのポイントと矛盾するように感じるかもしれないが、監督というのは絶対に正直に語りすぎてはいけない。なぜなら、戦術や采配の意図をあまりに詳細に説明すると、「あの監督の考えは、この程度か」と器を判断されかねないからだ。常に曖昧な部分を残しながら、相手に想像させるように話した方がいい。個人的な印象としては、川崎の高畠勉監督と磐田の柳下正明監督は会見で正直すぎるように感じる。コーチから昇格した監督は、急にミステリアスになれと言っても難しいのかもしれない。
この能力に優れていたのが、前日本代表監督のイビチャ・オシム氏である。ことわざを引用したり、記者に質問し返すことで、「細かく言わなくても、わかるでしょ?」というスタンスを貫いていた。オシムレベルには達していないかもしれないが、木村監督にも同じニオイを感じる。
今季のJリーグにはオリヴェイラ監督や木村監督を筆頭に、「ポストW杯」というキャッチコピーを考え出したFC東京の城福浩監督や、常に皮肉を忘れない湘南の反町康治監督といった会見力のある指揮官がいる。実際のプレーだけでなく、記者会見も見所のひとつになるだろう。いや、なる。