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圧倒的不利の下馬評を覆す落合采配。
王道vs.覇道の歴史は繰り返すのか? 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byTamon Matsuzono

posted2011/11/17 11:55

圧倒的不利の下馬評を覆す落合采配。王道vs.覇道の歴史は繰り返すのか?<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

日本シリーズ前日の監督会議では、秋山監督が「落合さんとやれるのは僕も楽しみ。勝つための野球をやる」とコメント。会議直後には、落合監督が秋山監督の肩を抱き「8年待ったぞ。王さんの時からだからな」と笑顔で話しかけていた

'92年、王道・西武に覇道・ヤクルトが挑んだ事例を検証。

 '92年、ヤクルトは3勝4敗で敗れたが、翌年、今度は4勝3敗で見事に雪辱を果たした。

 特に'92年は、王道を行く西武に、覇道を歩むヤクルトが挑んだシリーズだと言えた。そして翌年、ヤクルトはある意味、覇道を捨て、王道を選んだのだ。

 当時の主砲で現・解説者の広澤克実氏がこんな話をしていたことがある。

「'80年代、'90年代だけじゃなく、'00年代を通しても、俺は、あの頃の西武が最強だと思うよ。穴がなかったからね。

 '92年に負けて痛感したのは、西武に勝つには、西武より強くなるしかない、ということ。当時のヤクルトは、弱点を突くのがうまいチームだった。野村(克也)監督もそういう人だったからね。例えば、今のセ・リーグだったら、阪神も、巨人も、中日も、やっぱりウィークポイントはある。そこを突けば、こける。でも、西武にはなかった。ダルビッシュやマー君がそうでしょ。彼らを打つには、彼らより上にいくしかない。それと同じでね。でも、今でもセ・リーグはそうだよね。戦略、戦術に走る傾向がある。

 どっちのリーグで育った方がいい選手が出てくるかっていったら、やっぱりパ・リーグだと思うよ。セ・リーグにダルビッシュやマー君がいたら、おかわり君クラスのホームランバッターも出てくるんじゃないかな」

圧倒的有利だとされたソフトバンクは、なぜ序盤戦を落としたのか?

 戦前、やはり王道を極めたソフトバンクの方が圧倒的に有利なのではないかと思われた。ところが、第1戦と第2戦は、完全に中日ペースだった。

 そこには、少なからず、第1戦の先発にエースの吉見一起ではなくチェンを起用したことや、第2戦で突然、落合が内川聖一のバットのグリップの巻き方にクレームをつけたことなどが影響しているように思われた。

 シーズン中は感じられなかったソフトバンクのベンチ内の重苦しい雰囲気に、中日の戦術、戦略が、効いているのでは。そう思わされた。

【次ページ】 タイに戻しても、まだソフトバンクのペースでは無い!?

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