野ボール横丁BACK NUMBER
圧倒的不利の下馬評を覆す落合采配。
王道vs.覇道の歴史は繰り返すのか?
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byTamon Matsuzono
posted2011/11/17 11:55
日本シリーズ前日の監督会議では、秋山監督が「落合さんとやれるのは僕も楽しみ。勝つための野球をやる」とコメント。会議直後には、落合監督が秋山監督の肩を抱き「8年待ったぞ。王さんの時からだからな」と笑顔で話しかけていた
王道対覇道――。
今年の日本シリーズの対戦チームが決まったとき、まずそんな構図が浮かび上がった。
ここ数年、着々と補強を重ね、走・攻・守とバランスの取れた、ついに理想のチームを築き上げたソフトバンク王国。
パ・リーグのCS第1ステージで、西武に連敗した日本ハムの稲葉篤紀はこうシャッポを脱いだ。
「これが今の実力なのかな、と。ライオンズよりも力がなかった」
確かに、西武は力で日本ハムを圧倒していた。そして、その西武がファイナルステージでソフトバンクにやはり1勝もできずに負けたとき、監督の渡辺久信はこう完敗を認めた。
「差は大きい。来年はチームを一度、ぶっ壊すぐらいの気持ちで巨大戦力に立ち向かっていきたい」
この2人の証言からもわかるように、今年のソフトバンクは、近年セ・リーグよりもレベルが高いと言われるパ・リーグの中で、頭ひとつもふたつも抜けた存在だったのだ。まさに王の中の王と言っていいだろう。
'00年代最強の中日は、勝利まで最短距離で戦う“覇道”のイメージ。
一方、監督の落合博満が率いるようになってからの中日はその安定感からいっても、両リーグを通じて2000年代、最強のチームといっていい。だが、ソフトバンクのような明快な強さではない。わかりにくいのだが、とにかくしぶとい。試合が終わると1点、上回っていたりするのだ。
特に今シーズンは、打率と得点が12球団の中で最低ながらも、リーグ優勝を為し得た。中日には、単純に戦力やデータだけでは計れない強さがある。
感情を排し、どんなときでも勝利へ最短距離で結びつけることのできる落合采配。いわば、覇道のイメージだ。
王道対覇道という構図は、'92年と'93年の西武対ヤクルトの日本シリーズを想起させる。