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台風一過の“多摩サイ”を下る。
河川敷の自転車道は戦争状態!?
text by
疋田智Satoshi Hikita
photograph bySatoshi Hikita
posted2011/10/01 08:00
多摩川の河川敷はどこまでも長く、広々しているのだが……意外や自転車乗りにとっては受難の道であった
多摩動物園にいる動物のサイ……のことじゃないぞ。「多摩川サイクリングロード」、通称“多摩サイ”を、今回は下っていこうと思う。
自転車は例によってフォールディングバイクの傑作車ドイツの「BD-1」。これを京王線に乗せて、まっすぐ「京王稲田堤」まで行ってみる。前からこの駅名の「堤」の堤ぶりが気になっていた。着いてみると、JR南武線の稲田堤駅というのもあるのね。
このあたり、首都圏の中でもヒキタ的にはほとんど縁のないところで、なんだか街並みが趣深い。都市と田園が絶妙に入り交じっていて、なんだか「街の汽水域」という印象を受ける。何かというと、街中にいきなり「梨園」が出現したりするところがまさにそんな感じである。
梨園っても別に歌舞伎がどうしたり、嫁姑関係が厳しかったりとか、そういうことじゃないっすよ。リアルな意味での「ナシ園」。この周辺、川崎多摩区は、首都圏にもかかわらず、ナシの生産が盛んなのだ。
それにしても、テレビ屋ヒキタに言わせると、お昼のワイドショーを見る奥様方は「梨園」というものが、ホントにお好き。私の経験から言っても「これから梨園の妻になる元○○局アナウンサーの○×さんは……」なんて話は鉄板で視聴率のとれる話題となる。なんだろう、やはり普段見られない別世界の中で、お馴染みの話(嫁姑とか兄弟の確執とか)が展開するからだろうか。
台風一過なのに、どうして快晴じゃないの~!
さて、そういう梨園とは別に本日の多摩川は大河である。水量が豊かで、川幅がものすごく広い。その理由は、前日に、大きな被害をもたらした、あの台風15号が首都圏を直撃していたからだ。
本日はその台風一過。
台風一過といえば、そりゃ晴れだろうて。しかもコレだけ気合いの入った台風が去れば、快晴、というのが通り相場だ。
ところが、昨今の異常気象の中では、そんな常識は通用しない。
台風一過、多摩川は大増水。それなのに、雲は分厚く、天気はどんより。
何だかよく分からんな、昨今の気象は。何だかんだ言われながら、地球温暖化は確実に進んでるし、地球は壊れつつあるよ。
とまあ、その増水ぶりを見ながら、基本的に河口に向かって左側、つまりは、橋を渡って東京側を通っていくことにする。台風の爪痕は多摩サイにも残っていて、ところどころが、泥と、流木、流草(?)で通せんぼとなっている。
調布市のトンデモ自転車戦略とは?
さて、多摩サイ、このあたりは調布市の管轄となるんだけど、いやはやいきなりトンデモないものが現れる。左を見ると「お、京王閣(競輪場)だ、自転車の聖地だな」なんて“自転車的なる地元”なのにもかかわらず、路面に「この先、段差注意」と大書され、現実にデコボコ段差が、5つ出現するのだ。
時速20km以上でここに突入すると、うおー、ガタガタガタガタガタと、たまらないことになる。手は痛いし、顎ががくがく動き、ハンドルを取られて転倒しそうになる。
しかもこの段差群、何度も何度も続くのである。5つセットで、これでもか、これでもかとばかり、厭がらせのように出現しては消える。
この付近にお住まいの自転車系SF作家・高千穂遥さんが「実にけしからんね」としきりに言っていたのを思い出すが、実際にけしからん。普通に言って危険すぎるだろう。
そもそもで言うなら、この段差「自転車のスピードが速くて危険だから」という理由で設けられることになった。
サイクリングロード、すなわち「自転車の道」なのに?
そうなのだ。そこがこの多摩サイの最初からのイビツな部分なのである。