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台風一過の“多摩サイ”を下る。
河川敷の自転車道は戦争状態!? 

text by

疋田智

疋田智Satoshi Hikita

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photograph bySatoshi Hikita

posted2011/10/01 08:00

台風一過の“多摩サイ”を下る。河川敷の自転車道は戦争状態!?<Number Web> photograph by Satoshi Hikita

多摩川の河川敷はどこまでも長く、広々しているのだが……意外や自転車乗りにとっては受難の道であった

自転車vs.ランナーvs.ペットで戦争状態!!

 多摩サイは「サイクリングロード」という名が付いているものの、その実体は「自歩道」に過ぎない。

 自転車も歩行者も通れる道路。しかも優先権は歩行者にある。自転車はあくまで走らせてもらっている立場なのだ。「自転車専用道」などではなく、実質的には歩道なのだ。

 そこに、昨今の自転車ブームと、ランニングブーム、ペットブーム、と、3タイプのブームが、不幸な形で重なってしまった。その結果が、現在の多摩サイ状況で、必然として、多摩サイの人口密度は(特に休日)殺人的に高くなり、犬の散歩やら、ランニングやら、ローディやらが縦横無尽に走るようになり、それぞれの軋轢や事故が増えた。万人の万人に対する闘争状態となった。リバイアサンである。

 そうなると、一番割りを食うのは自転車であって、なぜならば、この多摩サイという名の走行スペースの中でもっとも「交通強者」なのは自転車だからだ。そのこと自体が悪いとは言わない。事実、自転車は強者だから。自転車はこのスペースの中で、たしかに一番、人を傷つけがちだ。

 しかしね、こうした段差が造られ、入り口に自転車の通せんぼができ、あらゆる手を尽くして(という形に見える)自転車の行く手を阻んでしまう現状を見るに、単なるネーミングといえど、これのどこがサイクリングロード? と不思議に思ってしまうのだ。

調布と世田谷の自転車施策は大きそうで小さな差……残念。

 増水中の多摩川沿いを、そういう段差に負けず走っていく。

 でもま、何だかんだ言っても、BD-1はサスペンションが着いているんで、ロードよりはマシだ。

 河川敷には市民農園がずらーりと並んでいる。都市圏の河川敷農園はどこに行っても大盛況なのだという。大阪でも名古屋でもそうだし、私が以前住んでいた江東区南砂(荒川沿い)でも、河川敷農園はたしかに順番待ちだった。人というものは、やはり「農耕」とか「栽培」とかいうものを嗜好するように、とDNA的に刻み込まれているのだろうね。

 土手の左手には新興住宅地。右手には市民農園。そして、土手自体には、おや、彼岸花が咲いてるよ。

 秋だなぁ。

 気づくと、いつの間にか調布市を過ぎ(そういえば段差攻めがなくなってるよ)世田谷の宇奈根あたりだ。土手の上から見ると、このあたりは「最寄りの駅」「鉄道路線」に乏しく、高級住宅地・世田谷区といえど、何だかまだまだ畑がたくさん残っている。

 そういう東京郊外の風景の中を「いいぞいいぞ、さすがは世田谷区。段差もないぞ。調布とちょっと違うぞ」と思いながら行くと、はたして、いきなりまたまた通せんぼされてしまった。

 今度は「通行止め」の鎖だ。

【次ページ】 自転車の規制を考えるなら、必ず乗って確かめて!

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