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「カメラマンの“あーあー”という表情が見えて」ドラフト生中継でまさかの指名漏れ…ロッテ・佐藤都志也が振り返る「一人で泣いたあの日」
posted2024/10/24 11:01
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph by
KYODO
ドラフトの季節がやってきた。マリーンズの佐藤都志也捕手にとって色々な思い出が浮かび上がる時期でもある。
あれは聖光学院高3年の秋。佐藤都は学校が用意した校内の一室にいた。野球部のグラウンドで練習した後、ドラフト会議が始まったタイミングでその部屋に向かった。
「グラウンドで練習をしていて、そのあと、制服に着替えて歩いていった。県内唯一の指名候補だったので、結構、地元のメディアがいた」
カメラが見守る中で…
部屋に着くと大勢の地元マスコミが待ち構えていた。テレビカメラも準備されていた。地元テレビ局では異例の生中継も用意されていると聞かされた。両親、そしてチームメートも会場に駆けつける。全員で喜びを分かち合う用意が整っていた。甲子園の常連校の4番打者として、ドラフト指名候補として、福島県内の注目を一身に集めていた。
「正直、あの時の自分も下位だろうけれど指名されるかなあ、と思っていた甘い部分はあった」
各球団の指名が始まった。中継を見守りながら、待った。時間だけが流れていく。各球団が指名をするたびにカメラマンたちがその瞬間を見逃すまいと壇上にいる高校生の表情にピントを合わせる。そして違う名前が呼ばれると、いったん臨戦態勢が解かれる。その流れが延々と繰り返された。
無情の「選択終了」
「行けるだろうと思って、行けなかった。行けなかった時は空気を感じました。みんながどこかの球団の指名が始まるたびにカメラを構えて、『ああ、ダメだったか』となる。その連続。『あーあー』というような表情もボクからは見える。最後の方はそれがすごく辛くなった」
「選択終了」
各球団から無情のアナウンスが流れ始めた。育成でのプロ入りは選択肢の中になかった。全球団の指名選択終了は、夢が途切れることを意味していた。
「その空気は今でも思い出せるくらいきつかった。これだけの人が集まってくれたのに、名前が呼ばれなくて恥ずかしいというか申し訳ない気持ち。色々な感情があった」