プロ野球亭日乗BACK NUMBER
日本のWBC3連覇は幻に終わるのか!?
参加を巡る日米対立の“お家事情”。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2011/09/18 08:01
連覇を達成し、国民を大いに沸かせた2009年の第2回WBC。ファンの多くは3連覇に挑むサムライジャパンの雄姿を見たいと望んでいるのだが……
スポンサー権よりも当座の現金が欲しいNPBの懐事情。
その上で12球団にも12球団のお家の事情がある。
実はNPBは自らが運営してきた年金制度の破たんにともない、新たに選手が加入する必要が出てきた国民年金基金の奨励金の負担を迫られている。今回のWBCの収益分配の見直しもその一端として出てきたものだった。その5億円ともいわれる原資分の収益が出なければ、12球団はそれぞれ今ある財源から捻出しなければならない。
逆に言えば、今回の問題で相当分の金銭的譲歩が得られれば、スポンサー権の譲渡に関しては継続審議で後回しにして妥協点は見いだせるはず、というわけだ。
WBCI側はIT景気に沸く台湾での開催案で日本を揺さぶる。
しかもWBCIサイドには、不穏な動きもある。
すでに台湾の関係者と接触しており、コンピューター関連企業が活況を呈している台湾経済界をバックに、台湾開催の可能性を模索しているという情報がある。そうなると慌てるのは、これまでも日本ラウンドを主催してきた読売新聞社と、日本企業など大会スポンサー集めを行ない、すでに日本代表の“サムライジャパン”という呼称までを商標登録している大手広告代理店の電通ということになる。
「こうした様々な思惑から、10月中にはNPBサイドは参加で着地せざるを得ないのでは……」(前出関係者)
選手会は正当な権利の要求を強硬に主張しているが……。
ただ、問題は選手会の強硬姿勢だった。
選手会は8月のWBCIとの交渉でも、選手会への分配金アップなどの“甘い誘い”も蹴飛ばして、あくまで正当な権利要求を貫いてきている。選手会への利益誘導ではなく、あくまで日本球界の正当な権利の要求であり、NPBが潤うことが、選手への利益につながるという姿勢なのだ。
「ただ、中にはお金の問題ではなく、国際大会で日の丸を背負ってプレーすることは、メジャーなどへのアピールの場となると考えている選手も多い。そればかりか若い選手には、サッカーの代表戦などを観て、純粋に日の丸のユニフォームを着るのが夢という思いもある。その夢の場がなくなるのは寂しい、という意見も少なくない。そういう選手の声を拾っていくと、妥協点を見出さざるを得なくなるでしょう」
こう説明するのはあるOB選手だった。