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甲子園のスターがアジアAAAを制覇。
気になるドラフト候補を徹底分析!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/09/08 10:30
今大会通算20打数10安打13打点の成績で最優秀選手(MVP)となり、優勝に貢献した高橋周平(東海大甲府)。甲子園は未出場ながらも、強烈な印象を残して高校での野球を締めくくった
兵庫大会決勝2連投の原は腕を大きく振る本来の投球を。
原も大きく印象を変えた。選手権では兵庫大会決勝2連投(引き分け翌日再試合)の疲れもあり本調子ではなかった。それでいて多くのスカウトが「ドラフト上位」と印象を語ったのは、それだけ原の素質が上位だという証である。
ヒジが立たない、体が開くという欠点がない代わりに、疲労残りの体力を温存するため腕の振りを抑え、体全体の躍動を抑えていたのが選手権時の姿。しかしこのパキスタン戦、原は思い切り腕を振り、体を躍動させていた。いわば、自分だけの世界に入り込むことができた。
原のことをかつて「東尾修2世」と書いた。内角を果敢に攻める強気なピッチングと、成熟期(晩年と言い直してもいい)の“もっさりした”投球フォームが似ているためだが、パキスタン戦を見たあとではそれは疲労残りがさせていた負の姿だと思った。
非力なパキスタン打線を一顧だにせず、自分だけの世界に入り込むことができた原は、東尾というより東浜巨(亜細亜大3年)を彷彿とさせる。プロで251勝した東尾を大学3年生より下に見るのではない。選手権で物足りなかった若さ、躍動感をアジアAAAで爆発させた原を比較するなら、ベテランより若手のバリバリのほうがいいに決まっている。さらに左肩が開かず、体の方向性にブレがない正確な投球フォームという点で原と東浜には共通点がある。
体の躍動を抑えることで輝きを増した釜田、反対に体を思い切り躍動させることで光明を見出した原。パキスタン打線は非力ゆえに、2人の逸材の開花に手を貸すことができたと言えるだろう。
甲子園未出場の高橋が見せた非凡な打撃センスと課題。
野手では甲子園未出場の高橋周平に注目した。
以前このコラムで「捕手寄りのポイントでボールを捉え、広角に打ち分けている」と誉め、「相手が勝負してくれない弊害は、ボール球に手を出す悪癖に現れていた」と課題も書いた。アジアAAAではその両方が特徴となって現れていた。
パキスタン戦は18安打、34得点の猛攻の中にあって、満塁の走者を一掃する三塁打こそ放っているが4打数2安打という記録に留まった。
好投手が登板したチャイニーズタイペイ(以下台湾)戦は、第1打席が初球の変化球を打たされて併殺打、第3打席はファーストストライクの3球目を打って二飛と早打ちが目立った。第2打席だけが1ボール2ストライクから前進守備の一、二塁間を抜く先制タイムリーだったが、ここまでは以前から続くよくない面である。