カンポをめぐる狂想曲BACK NUMBER
From:札幌(JAPAN)「サッカーがプロ野球にならないために」
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byShigeki Sugiyama
posted2004/07/30 00:00
コンサドーレのお寒い現状に、突っ込みの甘い
地元マスコミ。こんなことでは将来が危ない。
サッカーを思えばこそ、僕は文句を言い続けます!
コンサドーレ札幌。道産子を逆さ読みしてもじったこのネーミングを、僕はとても気に入っている。ナイス! と思わず言いたくなるセンスを感じる。Jリーグ28クラブ中No.1だと思う。しかし、現在の成績とは真っ逆さまの関係にある。28クラブ中28番目。24戦して挙げた勝ち星はたったの2。J2のお荷物クラブと化している。
ホーム「札幌ドーム」に横浜FCを迎えた23節の試合(0−0)も、内容はとても寒かった。横浜FCに主導権を常に握られ、防戦一方に陥りながらも、何とか無失点で逃げ切った格好だ。スタンドにはそれでも1万1千人の観衆が駆けつけ、ゴール裏席は「どん尻」が嘘のような熱気で覆われていた。よほど気が長いのか、お人好しなのか、はたまた心の底からコンサドーレを愛しているのか、ポッとやってきた僕には皆目見当が付かなかったが、ともかく、チームのふがいなさは、それで一層デフォルメされた。監督の進退問題とか、何か騒ぎがあっても不思議はないと、試合後、僕は野次馬気分で記者会見室を覗いてみた。
「非常につまらない試合をしてしまった」。柳下監督の開口一番の台詞にはうなずけたが、以降はまるで納得いかなかった。
「相手も最初は積極的に出てきましたが、後半の途中からズルズルと下がってしまって……」。つまらない試合内容を反省するのかと思いきや、すかさず原因を相手に求めようとする姿勢は、とても見苦しかった。
その前に会見した横浜FCのリトバルスキーはこう言った。「詰めかけたたくさんのお客さんは、ゴールを望んでいたと思いますが、我々がそれに貢献できなくて、とても残念に思います」。皮肉以外の何ものでもない台詞をリティは吐いた。終盤に失速した理由はこうだった。「疲れがでた」。
「ズルズルと下がった」と見た柳下監督と、リティの「疲れがでた」と、どちらに納得がいったかといえば、断然後者になる。客観的に見て、横浜FCの方が何倍も攻撃的で、かつ魅力的だった。たくさんのお客さんを集めた中で行ったホーム戦にもかかわらず、終始、後ろにへばりつき、縦蹴りのカウンターに終始したコンサドーレより、幸は多そうに見える。
さらに「守備の意識は高くなっているが、ボールを奪った後の、1つ目、2つ目のプレーですぐに相手に奪われるコントロールミスが目立った」と、柳下監督は語ったが、これにも全く合点がいかない。あれだけ人数をかけて、後ろで構えれば、嫌でも守備の意識は高まる。ボールを直ぐに奪われてしまうのも、前に人が足りないのだから当然。原因は選手の技術だけではない。
さらにだ。柳下監督の語調は、言ってみれば敗軍の将であるにもかかわらず、とても威圧的だった。その強面は一部の政治家のようであり、プロ野球の一部の関係者のようでもあった。
そして、それ以上に驚かされたのが、地元記者の弱腰だ。「敗軍の将」に向けられた質問は数少なく、しかもその声はとても小さかった。そこに危機感を抱く様子、怒りを覚えている様子はまるでなかった。「ご用聞きじゃないんだから……」。そう思いたくなるほど、突っ込みは甘かった。
コンサドーレはこのまま最下位をひた走っても降格はない。Jリーグに3部はないので、現在の地位は安泰だ。J1の降格争い、J2の昇格争いが熾烈なだけに、ぬるま湯は余計に目立つ。取り巻く記者も、そこに埋没している様子だ。
そこで思うのは、いま世間を騒がせているプロ野球の問題だ。その原因はどこにあるのか。これまでのプロ野球を取り巻くマスコミの姿勢も、問われてしかるべきだと僕は思う。プロ野球のあり方について、なぜいままで、意見を戦わせてこなかったのか。サッカーには多い批判精神が野球には少ない。
そうならないためにも、文句は言い続けなければならないと、僕は札幌で改めて誓った。もっともっと頑張る必要がある。でないと、いつかプロ野球になってしまう。多少トンチンカンでも、言わないよりマシ。それくらいの気持ちでやって行こうと。よろしくお願いします!