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「つなぎの4番」なんかじゃない。
日ハム・高橋信二が隠しもつ牙。 

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田端到

田端到Itaru Tabata

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2009/11/09 12:40

「つなぎの4番」なんかじゃない。日ハム・高橋信二が隠しもつ牙。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

では「0型」のHR打者はどういう特徴を持つのか?

 これに対して0型のホームラン打者は、相手のマークが厳しくなると打てなくなったり、4番に座ると打線がうまく回らない、といったことも起こる。想像してみればわかるだろう。ファースト・ストライクしか打てない4番打者は、それほど怖くないし、肝心な場面でもろい。

 たとえば今年のセ・リーグ本塁打王のブランコ(中日)は、本塁打39本中、0ストライクから21本、1ストライクから10本、2ストライクから8本の「0型」である。シーズン前半は快調なペースで本塁打を量産していたが、マークのきつくなった後半はもろさが目立つようになり、本塁打ペースも落ちた。

満塁時の打率もリーグ1位の高橋は、まさに理想の4番。

 0型のホームラン打者には代わりがたくさんいる。外国人を連れてくればいいからだ。しかし2型のホームラン打者には代わりがいない。高橋信二の'04年のデータは、彼がその資格を秘めた数少ない打者であることを示唆していた。

 ちなみに'04年の高橋には、もうひとつ特記すべき打撃成績があり、それは満塁時の打率だった。勝負強さを求められる満塁で、リーグ1位の5割近い打率をマークしていたのだ。

 2ストライクからの本塁打2位、満塁での打率1位。これこそ4番向きの資質である。近々、球界を代表する打者になるぞ。そう思って、以来、ずっと注目してきた。

 しかし、'05年の靭帯断裂の大ケガや、捕手としての守備面の弱点もあり、高橋が全国区のホームラン打者にのし上がることはなかった。そして'09年の今、ようやく「なんでもできる器用な4番打者」として、高橋の名前は全国区になった。

実は……高橋が隠しているホームラン打者としての“牙”。

 高橋はしばしば「後ろにつなぐだけ」とか「4番と言っても、4番目に打席に入るだけ」といったコメントを発する。

 本音なのだろう。その気持ちが今季の飛躍を生んだのかもしれない。

 しかし一方では、嘘だろ、とも思う。

 日本シリーズの第4戦、5回に高橋尚成から思い切りレフトへ引っ張ったダメ押しの本塁打は、狙って打ったように見えた。

 第5戦、一度は試合を決定づけたと思われた9回表の勝ち越しホームランも、「オレが決めてやる」という気持ちが前に出た、狙い澄ました一打だったように見えた。

 基本的にはつなぐ意識を強く見せながらも、時として、ここはひと振りで決めてやるという、ふだん隠し持っているホームラン打者としての牙、4番向きの性格が、ふと表にこぼれてくる。それが高橋信二の本質ではないのか。

 あるいは、レギュラーシーズン中に隠していたその本質が、1試合ごとに目覚めていったのが、ポストシーズンの高橋だったのではないか。

4番とは、試合をひとりで決められる打棒を持つ男のこと。

 クライマックスシリーズの楽天戦でも、日本ハムの天敵・田中将大から狙い澄ましたような先制弾を放ったが、4番打者は狙うべき場面では狙ってもいいこと、つなぐ意識より、オレが決めてやろうという気持ちが大事な局面もあることを、短期決戦の戦いの中で高橋は自覚していったのだと思う。だから144試合で8本しか打てなかった(打たなかった)本塁打を、ポストシーズンの10試合で3本も叩き込んだのだ。

 日本シリーズの最後の最後、一打逆転の場面で打席が回ってきたように、4番打者は「4番目に打つ打者」ではない。

 敵将の胴上げをじっとベンチで見つめ、その責任を強く心に刻んだはずの高橋信二が、来年、どんなバッティングを見せるのか。今から楽しみだ。

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