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「つなぎの4番」なんかじゃない。
日ハム・高橋信二が隠しもつ牙。 

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田端到

田端到Itaru Tabata

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2009/11/09 12:40

「つなぎの4番」なんかじゃない。日ハム・高橋信二が隠しもつ牙。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

 日本シリーズ第6戦の最後の場面。9回裏2死二、三塁、一打同点のチャンスでハーフスイングの三振に倒れ、2009年最後のバッターになったのは、日本ハムの高橋信二だった。

 試合後、敵将・原辰徳監督が胴上げされて宙に舞う姿を、ベンチに座り込み、じっと腕組みしながら微動だにせず見つめる高橋の姿が印象に残った。

 高橋の心には深く刻み込まれたシリーズだったに違いない。4番という自分の位置が「ただの4番目に打つ打者」ではないことが。

ただの「つなぎの4番」ではない。恐るべきデータを発見!

 高橋は日本シリーズで26打数10安打、打率.385、2本塁打で敢闘選手賞を受賞。全員攻撃のファイターズ打線を象徴する「つなぎの4番」としてたびたびクローズアップされ、存在感を示した。

 しかし私には「つなぎの4番」というキャッチコピーを高橋に使うことに、どうしても違和感がある。

 バントもできる。進塁打も打てる。打率は3割台。ただしシーズン本塁打は8本。今季の数字だけ見れば、確かに「なんでもできる器用な中距離打者」だろう。しかしこの姿が本質とは思えない。高橋はもっとスケールの大きな牙を隠し持っていると思うからだ。

 高橋信二という打者に、私が興味をひかれたのは'04年のことである。当時、毎年シーズンオフにプロ野球のデータ本を出版していた関係で、各選手の詳細なデータを検証する機会に恵まれた。そのとき驚かされたのが次の数字だった。

 2ストライク後の本塁打パ・リーグ2位、高橋信二14本。

 この'04年は高橋が初めて規定打席に達したシーズンで、26本塁打を記録。そのうち2ストライクに追い込まれてから打ったホームランが14本もあった!

 これがいかに目をひくデータか。同年、パ・リーグの本塁打王は松中信彦とセギノールの44本。2ストライク後の本塁打は、松中が12本、セギノールは15本。

 本塁打王にも劣らぬ本数を、当時ようやくレギュラーをつかみかけたばかりの日本ハムの捕手が打っていたのだ。

真の意味での4番打者の特徴「2ストライクからの本塁打」。

 2ストライク後の本塁打数には特別な意味がある。

 ホームラン打者には大きく分けて2つのタイプがある。0ストライクからの本塁打が多い「0型」と、2ストライクからの本塁打が多い「2型」だ。

 0型は投手がカウントを取りに来たところを、悪く言えば出会いがしら的に打つのがうまい。外国人のホームラン打者の多くがこちらだ。一方、2型は投手に球数を投げさせ、自身が不利なカウントになっても、相手の配球を読んで決め球を打ち砕く。

 価値が高いのはもちろん2型で、このタイプのホームラン打者はひと握りしかいない。近年では松井秀喜、小久保裕紀、中村紀洋、少し前なら落合博満……。決定的な場面で試合を決める一発を打てる、真の意味での4番打者だけが「2ストライクから本塁打を量産」という、価値ある記録を残せる。

【次ページ】 では「0型」のHR打者はどういう特徴を持つのか?

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