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左打者が多すぎる。
~勝利至上主義の弊害~ 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNaoya Sanuki

posted2009/06/16 06:01

左打者が多すぎる。~勝利至上主義の弊害~<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 6月14日に幕を下ろした大学選手権を見て感じたのは、左打者(スイッチヒッター含む)の多さである。出場した26校の初戦のスターティングメンバー(以下スタメン)に名をつらねた左打者は総勢120人。これは51.3%、つまり1校9人のスタメンの内、4.6人が左打者という計算になる。

 友人にこれを言うと、「左打者はもっと多いと思った」と首を傾げた。僕も同じ意見なのだが、左打者が多くならないのは、大阪教育大(2人)、高岡法科大(3人)、道都大(3人)、石巻専修大(3人)などの発展途上校が平均値を下げているためで、積極的に選手を集めている強豪校に限定すれば、左打者はもっと増える。8強に進出した東海大海洋学部(7人)、関西国際大(7人)、日本文理大(6人)、法政大(4人)、近畿大(5人)、富士大(6人)、創価大(6人)、東洋大(6人)のスタメン72人中、左打者は47人を数える。左打者が占める割合は65.3%。つまり、1校9人のスタメンの内、5.9人が左打者という計算になる。

 左打者が急増しているのは5、6年前から気づいていたが、今年の5月11日に行なわれた東都大学2部リーグの国士舘大対日本大戦を見て愕然とした。国士舘大のスタメン9人全員が左打者だったのだ。ここまできてしまったのかと思った。僕は打者走者の全力疾走こそ日本野球の真髄と思い、さまざまな媒体でその効果を書いてきたが、左右のバランス、長短(長打・短打)のバランスを崩してまで左打者を掻き集め、走る野球に邁進するのはいいことだと思わない(ちなみに、国士舘大は今季、東都2部リーグで最下位に終わっている)。

「右投左打」の打者に偏重することの弊害とは?

 3月のWBCを見てもわかるように、日本代表チームには左打者が異様に思えるほど多かった。15人の野手のうち阿部慎之助、小笠原道大、亀井義行(巨人)、岩村明憲(レイズ)、川﨑宗則(ソフトバンク)、イチロー(マリナーズ)、福留孝介(カブス)、青木宣親(ヤクルト)、稲葉篤紀(日本ハム)の9人が左打者で、このうち稲葉を除く8人が「右投左打」、つまり作られた左打者だった。それが相手チームにスキを作る原因になり、とくに韓国戦では奉重根、柳賢振の左腕に再三抑え込まれ、北京五輪では左腕・金広鉉に「日本チームキラー」の異名まで与えてしまった。

 その韓国には日本のプロ、アマが最も育成に手間取る右のスラッガーが金泰均を筆頭にズラリと揃い、日本の投手を打ち込んできた。左打者は左投手(とくに変則)を苦手にするが、右打者には左右投手に対する得手・不得手があまりない。つまり、相手チームの継投策をやりにくくさせる。しかし、日本チームにはポイントになる場面で左投手を登板させる継投策が常識になりつつある。左打者がこれほど多ければ、そうしないほうがおかしいのだ。

【次ページ】 近視眼的な勝利至上主義が「作られた左打者」をうむ。

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