プロ野球PRESSBACK NUMBER
梨田昌孝と原辰徳、
ふたりの名将の決戦!
~キツツキ戦法vs.車懸かりの陣~
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2009/10/31 07:00
巨人vs.日本ハムの戦いはまさに“川中島合戦”だ!
糸数に望まれるのは……ずばり昨年の西武・岸孝之のように、チームに流れを呼び込む投球内容だ。シリーズ序盤に合戦の急先鋒として成果をあげられれば、そこから一気に巨人の動揺を誘い、いわば第四次川中島合戦で武田軍が上杉軍に仕掛けた総攻撃、「啄木鳥(きつつき)戦法」がしやすくなる。これは、上杉軍に奇襲をかけて主戦場である八幡原に引きずり出しそこで総攻撃をかけるという戦術だったが、巨人を自軍のペースに引き込むことができれば、それも可能となるはずだ。
では、総攻撃のポイントはどこになるか?
現実的には厳しいだろうがダルビッシュの登板にあるのではないか。梨田監督は「使うとしたら先発」と言っているが、果たしてどのタイミングで起用するのか。それはやはり、糸数の投球次第と判断したい。
積極的に仕掛ける原監督に「車懸かりの陣」の再来を見る。
史実では、この「啄木鳥戦法」は不発に終わっている。上杉謙信のとっさの判断力から生まれた行動と「車懸かりの陣」によって打ち砕かれたからだ。
この戦術で思い出す人もいるだろう。これこそ、原監督がWBCで銘打った作戦なのである。
実際には3つの輪の陣列を作り、車輪のように攻撃しては退くという戦法だが、実際、先に述べた4番打者や守護神が次々に変わり襲いかかる戦い方に近いといえた。
「車懸かりの陣」を存分に生かすためには、坂本勇人と松本哲也の1、2番コンビで相手の出鼻を挫く必要がある。出塁率の高い坂本に、ファウルで粘れる松本の小技。ここで相手投手の集中力を削いでおけば、得点圏に強い小笠原道大とラミレスがしっかりと走者を返してくれる。つまり、日本ハムの「啄木鳥戦法」を防ぐキーマンは、坂本の出塁と松本のしつこい打撃となってくるだろう。
「平成の川中島合戦」が、ついにその火蓋を切る!
下馬評では戦力の充実度などから「巨人優勢」の声が多いが、梨田、原両監督の采配に注目する評論家も多い。
武田信玄と上杉謙信の戦術を喩えに、シリーズの行方を考察してみたが、采(さい)を揮(ふる)う「北海道の信玄」と「東京の謙信」の対決は、昨年以上の激戦を予感させるし、布石となる要素も豊富に用意されている。
プロ野球を代表する名将によって演じられる平成の川中島合戦。その第一幕が、もうすぐ始まる。