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故障者続出で不調の巨人だが……。
大田、藤村に未来の常勝軍団を見た!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/06/02 10:30
5月25日、26日のソフトバンク戦、2試合連続の3安打猛打賞で存在感を見せた藤村大介。近い将来、ジャイアンツ打線不動の1番打者になる素質を秘めている
チームの打線の骨格は中軸のスケールによって決まる。
バットが内側から出ない、外角球を引っかけるなど注文をつけたい部分はまだある。原監督が「色々と話したいことはある」というのもその辺りだろう。しかし、思い切りバットを振れるだけでも大進歩である。
類まれな長距離砲の素材は、そんな簡単なところを突破するだけで様変わりする。T-岡田も上・下半身の動きを可能な限り封じ込めることによってブレークした。
チームの打線の骨格は中軸のスケールによって決まる。
多くの球団は在籍年数が短い外国人にその座をあてがい、彼らが辞めるたびに骨格の変更を余儀なくされているが、過去にはON(王貞治+長嶋茂雄)の巨人、AK(秋山幸二+清原和博)の西武のように、長く主軸を任せられる人材を擁し、黄金時代を築いたチームがあった。
大田のブレークは単に大田の問題ではなく、次代の巨人がどういう骨格を備えるチームになるのかという、根本的な問題にまで発展する。だから大田は“キーパーソン”なのである。
藤村大介は1番打者として歴史に名をつらねる存在になれる。
今現在の「実績のない選手半分」という構成は、数年後、巨人がどういうチームになるのかという謎かけみたいなものである。
常に実績のない選手が半分占めるということでなく、今実績のない選手が成長して、坂本、阿部、長野たち実績のある組と混じり合い、絶妙のバランスを築き上げる――そういうチームになれる可能性を今の巨人は秘めている。ここで、大田とともになくてはならない選手に登場してもらう。
藤村大介である。
とにかく足が速い。足が速いと同時に足を緩めない。
私は'06~'07年の2年間、藤村が在籍していた熊本工の試合を9試合見ている。そして驚くことに、目撃した33打席中、30本が、私が俊足の基準とする「(打者走者の)一塁到達4.30秒未満、二塁到達8.30秒未満、三塁到達12.30秒未満」だった。
私がストップウオッチ持参で試合を見るようになった'02年夏以降、そんな選手は藤村ただ1人だけである。
その「足を緩めない藤村」が、今も健在なのが嬉しい。