Jリーグ観察記BACK NUMBER
戦い方が見つからない浦和レッズ。
今こそ問われる本物のフロント力。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMasahiro Ura
posted2011/06/05 08:00
浦和の前はイングランドのウェストハムでアシスタントコーチだったペトロビッチ監督。5月29日、浦和の橋本光夫代表、柱谷ゼネラルマネジャーの3者で会談し、現体制で引き続きやっていくことを確認した
ゼリコ・ペトロビッチ監督も、柏木陽介ら選手たちも、試行錯誤を続けているが、なかなか答えが見つからない。
浦和レッズはどうサッカーをするかという形がまったく定まらず、4月24日の名古屋戦で勝って以来、第13節までここ6試合1度も勝利がない(3分3敗)。現在14位に低迷しており、このままでは残留争いに巻き込まれかねないだろう。
いったいなぜ、開幕から約3カ月が経っているのに、いまだに浦和の戦術は定まっていないのだろう?
Jリーグ開幕前の本コラムでは、「ペトロビッチ監督は相手のサイドバックの裏に長いパスを出すように指示している」と書いた。いわゆるロングボールサッカーだ。だが当時は、試合数が少ないこともあって、なぜペトロビッチ監督がこういう指示を出しているかまではわからなかった。
その理由が、おぼろげながら見えてきた。
監督と選手の戦うイメージがズレたままの状態が続く。
もともとペトロビッチ監督は浦和に来たら、パスをつなぐオランダ式の攻撃的サッカーをやりたいと考えていた。4-3-3のシステムをベースに、ピッチに横に広く選手が散らばり、テンポよくミドルパスをつないで相手を揺さぶるというサッカーだ。
だが、こういうオランダ式のサッカーには、速くて正確なミドルパスを出す能力が必要とされる。残念ながら、この点に関して、浦和にいる選手たちの能力は監督を満足させるレベルではなかったのだろう。
技術的には十分ミドルパスを出せるのだが、それを90分間続ける“頭の体力”、すなわち集中力が足りなかったのだ。1試合の中で頻繁にパスミスが起こり、致命的なカウンターをくらってしまう。これでは相手にチャンスをプレゼントするようなものだ。
その結果、ペトロビッチ監督は妥協案として、「無理にパスをつなごうとせず、ロングボールを蹴っていこう」と指示したのだった。
だが、説明が不十分だったため、選手たちはただ単に監督はロングボールサッカーをやりたいんだと解釈した。監督と選手のイメージが乖離しているのだから、うまくいくはずがない。
浦和は開幕戦で神戸に0対1で敗れた。