欧州CL通信BACK NUMBER
バルサに完敗したマンUだが……。
ファーガソンの逆襲は始まっている!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/05/31 10:30
1986年にマンUの監督に就任してから25年目となった今季。国内リーグ最多優勝回数だけでなく、1999年にはイングランド初となるトレブル(プレミア、FAカップ、欧州CLの三冠制覇)も記録している、まさに生ける伝説である
マンチェスターUは、バルセロナの前に敢え無く敗れた。
スコア上は1対1と均衡を保った前半でさえ、ポゼッションでは33%対67%と圧倒的な劣勢を強いられた。数字が全てではないと言われることもあるサッカーの世界だが、今回は数字が示す通りの一方的な敗戦だった。
最終的なスコアは1対3。
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2年前の決勝対決と同じ2点差だが、「完敗色」は今年の方が強い。0対2で敗れた前回は、自軍の攻撃よりも敵の攻撃力を意識した悔いの残る内容だったが、今回は勝ちにいった末に実力差を見せつけられてしまったのだから。
国内メディアでは、中盤に人数を割く安全策ではなく、4-4-1-1システムを採用したアレックス・ファーガソン監督の判断を「ギャンブル」と評する意見も聞かれた。しかし、攻めのスタンスを取った指揮官を非難することはできない。
難しい選手起用ながら、最善を尽くしたファーガソン。
右SBとして、経験値と守備力に勝るジョン・オシェイではなく、若く攻撃的なファビオ・ダ・シウバを抜擢した人選は、たしかに大胆だった。チームが攻勢に出た立ち上がりに、雑なプレーでポゼッションを譲った場面などには、ファビオの経験不足が窺えた。だが、致命的なミスを犯したわけではない。プレミアリーグでの優勝争い終盤に先発が続いた選手を、勝たなければ意味のない決勝でベストメンバーの1人として起用しても不思議ではない。
ボランチとして復帰が期待されたダレン・フレッチャーは、マッチフィットネス不足でベンチ入りが精一杯だったのだろう。先発は無理でも使える状態であれば、同点で迎えた後半から、敵の優位を軽減するための駒として投入されていたに違いない。
そして何よりも、このシステムを採用した最大の理由である、ハビエル・エルナンデスとウェイン・ルーニーの2トップは、マイボールの時間帯が著しく限られていた中で最善を尽くしていた。
特にルーニーは、度重なるクリアで失点を最小限に抑えたCB、ネマニャ・ビディッチと並ぶマンUのベストプレーヤーだった。ルーニーは、キックオフから1分足らずでクロスを放り込み、後方からロングボールが出れば空中戦に競り勝って、ナーバスに見受けられた敵の急造CB、ハビエル・マスチェラーノに揺さぶりを掛けた。34分に決めた同点弾は、無から有を生むような素晴らしいゴールだった。