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元広島のルイスが育児休暇第1号!
MLBで増える労働者の様々な権利。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph bySports Illustrated/Getty Images
posted2011/05/05 08:00
広島カープ時代には、最多奪三振賞やオールスター選出なども果たしており、カープファンからは「神様、仏様、ルイス様」とまで言われたコルビー・ルイス。2010年シーズンにはメジャー復帰し、レンジャーズのリーグ優勝に大きく貢献した
な、なんと広島カープにいたコルビー・ルイスが育児休暇を取得した。
現在はテキサス・レンジャーズでプレーするルイスは、4月13日に女児が誕生し、最近になって制度化された育児休暇の初めての取得者となった。
メジャーリーグの育児休暇制度(paternity leave)では、選手はシーズン中でも一時的に24時間から72時間に限ってチームを離れることが可能になっている。
このニュースを聞いたとき、「おぉ、メジャーリーグもここまで来たか」と思ったが、レンジャーズのマイク・マダックス投手コーチ(グレッグ・マダックスのお兄さん)は、「もっと以前からこの制度があってもよかったんじゃないか」とコメントしており、実情にようやく制度が追いついたという印象を持っているようだ。
40年間にわたって拡大してきたメジャーリーガーの権利。
メジャーリーグの歴史をたどっていくと、この40年間は選手の権利拡大の時期だったことが分かる。
もっとも影響が大きかったのは、フリーエージェント制(FA制)の導入だった。1975年、アンディ・メッサースミス(ドジャース)とデーブ・マクナリー(エクスポス)のふたりの投手が、球団が提示した条件に納得せず、契約しないままにプレーしたことがFA制導入の直接的なきっかけとなった。
FA制の導入によって、選手の年俸は右肩上がり。ヤンキースのアレックス・ロドリゲスは、2008年から始まった契約で10年間に総額にして約250億円を手にすることになっているが、これもFA制の導入と、アメリカのスポーツビジネスが好調だったことが要因になっている。
お金だけではない。選手会は待遇改善に取り組んできた。チームが遠征に出た場合、選手たちが宿泊するホテルのグレードも決められている。経営者側にしてみれば、少しでも経費を削りたいだろうが、そういうわけにはいかないのだ。
また、選手と球団が契約を結ぶ時に「オールスター出場手当て」や、日本人選手だと「日本との往復交通費」が条項として盛り込まれるようになったのも、代理人制度が普及し、細かい条件までが話し合われるようになったためだ。