リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
芝の長さと水撒きを巡る因縁が話題。
レアルとバルサの「滑り」の違い。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2011/05/03 08:00
毎試合前、大量に水が撒かれるカンプノウ。バルセロナの世界一華麗なパスワークを陰で支えている
ボールが速く動かないピッチ状態こそがレアルの勝因?
国王杯決勝の試合メンバー入りはできなかったものの、遠征に帯同し、ベンチのすぐ後ろから試合を間近で観戦したレアルのファンフランは、ピッチ状態が彼らに味方したことを明かしている。
「体力が消耗すればするほど、ボールの滑りは重要になる。後半、延長戦でバルサの思い通りのピッチでなかったことは僕らにとってとても大きかった。もちろん、チームの守備にスキはなかった。でも、体も頭も疲れている状態で守っている時に、ボールが速く動くことは“地獄”だよ。ロンド(輪になって行なうボール回し)の中でずっと鬼を続けさせられるようなものだからね」
通常の倍、4cmまで伸ばされたサンチャゴ・ベルナベウの芝。
そして“クアトロ・クラシコ”の第3戦目となる、4月27日のチャンピオンズリーグ準決勝第1戦は、サンチャゴ・ベルナベウで行なわれた。
芝生は最初の対決の時よりもさらに伸びていた。
前日練習を終えたシャビは、「4cm近くあるんじゃないかな」と語っているほどだ。
しかしバルサはメッシの活躍で、レアルから2ゴールを奪ってみせた。
欧州のみならず世界の頂点を決めるといっても過言ではない対決を巡り、スペインでクローズアップされたピッチコンディションの話題。スペインサッカーにおいていかに“ボールが滑ること”が重要視されているかを示している。
スペイン人は基本的にボールが滑るピッチ状態を好む。
筆者が所属する7人制サッカーの素人メンバーでさえ、人工芝が夜露に濡れてボールが滑る状態を好むのだ。だが、相手が自分たちよりも技術的に優れている時には、ボールが滑る状態でのプレーを嫌がる。1歩、もしくは爪先の差でボールに追いつくか否かという差が勝負を分けることを、彼らは子供の頃から思い知っているからだ。
だからこそ、彼らはピッチ状態を巡る争いという観点からもクラシコを楽しむことができるのだ。