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モウリーニョは戦わずして全面降伏!?
2点を背負うレアル、「奇跡」の条件。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byReal Madrid via Getty Images
posted2011/05/02 10:30
退席処分を受けたモウリーニョが、そのままベンチ裏の観客席に陣取り、メモをスタッフに渡しながら試合の指揮を執る、という珍しい風景も見られた4月27日のクラシコ。「また10人になった。なぜバルサと対戦するチームは、いつも10人で戦わなければならないんだい?」と試合後には語っていた
0-2で敗れた第1レグ後の会見で、ジョゼ・モウリーニョは決勝進出の可能性はなくなったと断言した。
――あなたの言葉から察するに、もうレアル・マドリーの敗退は決まったということでしょうか?
「そうだ。バルセロナには誇りと我々の世界に対するリスペクトを持って行こう。この世界で生きることには時々嫌気がさすが、これが我々の世界だ。次の試合で、もし我々が1ゴールでも奪って少し可能性が広がれば、再び我々は殺されるのだろう。今日の試合で可能性がないことは証明された」
ラリー・クラシコの過去2試合で相手の攻撃を止める原動力となっていたペペ、そしてセルヒオ・ラモスが第2レグでは出場停止となり、モウリーニョ自身もベンチ入りできなくなった。逆に最終ラインを束ねるカルバーリョが復帰するとはいえ、その状態で敵地カンプノウにて2点差以上の勝利を成し遂げるのは、確かに彼の言う通り「ミッション・インポッシブル」かもしれない。
2点のビハインドを背負ったモウリーニョは、当然ながら第1戦のリーガ・クラシコやCL第1レグのように、守備ブロックを作って相手が攻めてくるのを待ち受けるという選択肢を選べなくなった。バルサからすれば、相手がボールを取りに来なければ後方でパス交換を続けて時間を稼いでいればよいからだ。
最低でも3得点が必要なレアルは鉄壁のバルサをどう攻める?
マドリーは能動的にプレスをかけて相手からボールを奪い、ゴールを決めに行かなければならない。そのためのモデルはコパ決勝の前半だろう。DFラインを高く押し上げ、3トップと3ボランチが近い距離感を保ちながらボールホルダーとパスの受け手に同時に厳しくプレスをかけたあの45分間、マドリーは何度も敵陣でのボール奪取に成功し、ショートカウンターから数度のチャンスを作り出した。
問題は、あのアグレッシブなプレスを実現した2つの重要な駒、シャビ・アロンソの両脇でシャビとイニエスタを暴力的なまでに追い回したペペとケディラの不在だ。第2レグでプレー可能な守備的MFはシャビ・アロンソとラサナ・ディアラのみ。4-3-3のトリボーテを保つのであれば、もう一枚には攻撃専門のグラネロやエジル、ディマリアを起用するしかない。当然彼らの起用はボール奪取後の攻撃にはプラスとなるが、毎試合70%前後のボール支配率を誇るバルサを相手には守備に走る時間の方が圧倒的に長い。よって守備面のマイナスが攻撃面のプラスを上回ることは間違いなさそうだ。
いっそのこと開き直り、攻撃的布陣でポゼッション勝負を挑む可能性もなくはない。実際モウリーニョは第1レグでペペの退場がなかった場合、ラサナ・ディアラを下げてカカーをトップ下に投入し、より攻撃的な4-2-3-1にシフトチェンジするプランがあったことを明かしている。ただそれは、65分まで守備に専念し、バルサの選手達が苛立ちと疲労を募らせ始めるのを待ってから仕掛けてこそ効果があるとも言える。スタートから真っ向勝負を挑むのであれば、5-0と大敗した昨年11月の二の舞となる危険も覚悟しなければならないだろう。