リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
芝の長さと水撒きを巡る因縁が話題。
レアルとバルサの「滑り」の違い。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2011/05/03 08:00
毎試合前、大量に水が撒かれるカンプノウ。バルセロナの世界一華麗なパスワークを陰で支えている
ボール保持率で圧倒するバルサを、どう抑えるのか?
5-0でバルセロナが勝利した昨年11月29日のクラシコを含む今シーズンの両チームの対戦では、すべてバルセロナがボール保持率でレアルを圧倒している。
「速く頭を働かせ、ボールを素早く動かすのが俺たちのスタイル」というシャビの言葉通り、バルセロナは各選手間の距離を短く保ちショートパスを繋いで相手守備網を揺さぶり、攻撃を加速させるためのスペースを作り出す。
一方、レアルはバルセロナとの対戦でのみ自陣に引いて各選手間の距離を短くした守備網を敷く。
何よりも優先しているのは、バルセロナのパスワークに対応できる態勢を作ることだ。
効果的にカウンターを仕掛けようと、とにかく高い位置からボールを奪いに行く。昨年11月に0-5で完敗したからこそ、クラシコ4連戦でのレアルはなりふり構わず守備に徹することができたのだ。
ボールを繋いで攻める側、それに対して守る側という構図が明確になっている今回の対決。違った戦い方をする両チームは当然、異なるピッチ状態を求めている。
バルセロナはボールがより速く芝の上を滑る状態を、逆にレアルは少しでもボールに追いつきやすいように滑りが悪くなる状態を求めている。
芝を伸ばし、水さえ撒かなかったレアルのホーム戦。
4月16日、サンチャゴ・ベルナベウで行なわれたクラシコで、ホストであるレアルは芝生を長めに保ち、試合前もハーフタイム中にも水を撒かなかった。通常、サンチャゴ・ベルナベウの芝生は約2cmに手入れさせている。だが、芝の長さは「約3cmかそれよりも長かった(ブスケッツ談)」上に、水撒きも行なわれなかった。
約2cmに芝生を保ち、水撒きもするバルセロナのカンプノウのピッチとはボールの滑りは大きく異なった。ボールの滑りを抑えたレアルの作戦は超守備的に戦った彼らを助け、レアル守備網はバルセロナのパスワークに引き裂かれることなく1-1の結果を手に入れた。試合後、「当然、プレーへの影響はあった」とブスケッツは語っている。
続く4月20日の国王杯決勝は、中立地のバレンシアで行なわれた。メスタージャ・スタジアムの芝生の長さは約2.5cm。この試合前に、審判団は両クラブ代表とハーフタイム中の水撒きについて話し合った。
バルセロナが水撒きを希望したのに対し、レアルは拒否。結局、試合前の水撒きは行なわれることになったものの、ハーフタイムにはしないことになった。
レアルがバルセロナの攻撃をしのぎ切り、延長前半に決勝ゴールを奪った結果から言えば、またしてもレアルの狙い通りとなった。